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「教行信証」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:22時点における最新版

きょうぎょうしんしょう/教行信証

六巻。親鸞の主著であり、正式には『顕浄土真実教行証文類』という。本典、広文類などとも略称する。膨大な経論釈を引文し、ところどころに親鸞解釈文がある。文類集の形式をとっているが、漢文に独自の読み仮名をつけたり、引文も親鸞独自の引き方をするので、引文も含めて親鸞の著書とみることができる。本書は「真実の巻」と「方便の巻」に分かれており、真実の巻は教・行・信・証・真仏土の巻であり、方便の巻は化身土の巻となっている。さらに注目すべきは各巻に四十八願より、真実の願と方便の願を配したことである。「教巻」には『大無量寿経』の十七願を配する。「行巻」には十七願、「信巻」には十八願、「証巻」には十一願、「真仏土巻」には十二・十三願、「化身土巻」には十九・二十願を配する。法然の『選択集』が、十八願と選択本願を表し、十八願の救いの構造を示したのに対し、『教行信証』では、真実五願を開き、真実の願(十八願)より方便の願を開くところに特色がある。なお「化巻」には、三願転入の文があり、親鸞自らの宗教体験を語っている。救いの構造全体からみれば、十八願の教えを身につけるためには、十九願より二十願、さらには十八願への転入があり、それらすべて如来の悲願のはたらきにあるとみている。「行巻」は念仏とは何かを表し、これを大行と名づけ、「信巻」で信心について述べ、大信と名づけている。真実の教行信証は、すべて如来より回向されたとみる。また「教巻」の冒頭には、浄土真宗という教えは、往相と還相げんそうがありこれも如来より回向されたことをあきらかにしている。浄土往生すれば、ただちにさとりを開き、穢土還来して利他のはたらきをなすことが強調される。その他法然教義を継承しつつ、独自の親鸞教義の展開が、『教行信証』には多くみられる。なお『教行信証』はいつ頃書かれたかの問題があり、「化巻」には末法の年時を定めるについて元仁元年(一二二四)の年号があって親鸞五二歳で成立したとみて、その年を立教開宗と定める見方がある。また親鸞親蹟本(東本願寺蔵坂東本・国宝)の書誌学的研究もすすめられ、五二歳頃起筆して七五歳頃一応完成したが、なお部分的には、八五、六歳頃まで加筆訂正があったとの見方もある。また高田専修寺西本願寺に伝わる書写本があり、以前はこれも真筆本と考えられていたが、現在は清書本と称せられている。


【所収】真宗聖典


【参照項目】➡三願転入


【執筆者:浅井成海】