閻浮提
提供: 新纂浄土宗大辞典
えんぶだい/閻浮提
須弥山の南に位置し、人間の住む四つの大陸(四大洲)のひとつ。ⓈJambū-dvīpaⓅJambu-dīpaⓉ’dzam bu’i gling。閻浮里、剡浮、瞻部洲、南閻浮提、南贍部洲などともいう。その名の由来は、『立世阿毘曇論』一によれば、この大陸の北辺にそびえるジャンブ(Jambu、学名Eugenia Jambolana Linn)という霊樹であり、『俱舎論』一一によれば、この大陸の北方の無熱悩池の近くにあるジャンブの林、あるいはその美味なる果実である。南辺三由旬半、北辺および二つの斜辺がそれぞれ二千由旬の、正三角形に近い台形をなし、インド亜大陸に相似している。八熱地獄はこの大陸の地下にある。浄土教では、『観経』に「ただ願わくは世尊、我が為に広く憂悩なき処を説きたまえ、我れまさに往生すべし。閻浮提の濁悪世を楽わず。この濁悪の処には、地獄・餓鬼・畜生盈満して、不善聚多し」(聖典一・二九〇/浄全一・三八)と説かれ、悪が盛んで苦悩の多い穢土の代表として浄土と対比される。日本では平安末期ごろから日本を閻浮提の辺地にあり、粟つぶの散らばったような小国であると卑下する意識が深まった。貞慶・道元・日蓮・親鸞らにこの用例がある。なお人間の住む他の三つの大陸(洲、天下)は、東勝身洲(弗婆毘提訶)・西牛貨洲(瞿陀尼)・北俱盧洲(鬱単越)である。
【参考】山口益・舟橋一哉『俱舎論の原典解明 世間品』(法蔵館、一九五五)、定方晟『須弥山と極楽』(講談社、一九七三)、満久崇麿『仏典の植物』(八坂書房、一九七七)
【参照項目】➡四大洲
【執筆者:本庄良文】