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浄土相頓

提供: 新纂浄土宗大辞典

じょうどそうとん/浄土相頓

大乗他力念仏浄土宗の教えは、全仏教の価値観を相対的に判じていくと、煩悩のあるままに凡夫往生を遂げる、相頓であるという聖冏の説。聖冏は、法然を淵源とする浄土宗に代々伝えられてきた法門を時代状況の中で組成化したが、特に善導の二教二蔵義に基づいているのは大きな特徴である。それによれば、聖冏は、全仏教声聞蔵・菩薩蔵に大別し、声聞蔵を声聞乗・辟支仏びゃくしぶつ乗・菩薩乗に分け、菩薩蔵に漸頓二教があり、漸教に初分教十地、後分教六位六十一地があるとし、頓教に性頓と相頓とを分別し、相頓教内因・外縁往生品位の三門を立て、内因に安心・起行・作業、外縁に総願・別願五種増上縁往生品位に三輩九品を挙げ、浄土門菩薩蔵相頓であり、頓中の頓であると結論する。聖冏は『釈浄土二蔵義』一一で、「今この相頓は終窮の極談、済凡の秘術なり。直ちに方域を立てて無方域に即し、まさしく色相を仮りて無色相に即す。無二を行ずることなけれども、しかも色心を一法に悟り、不離を解せずして、しかも性相を一心に開く。見生の当体を改めざるの凡夫、覚らずして無生の本際に転入す。煩悩の迷本を断ぜざるの衆生、立ちどころに涅槃の常楽を証得す。有相の心をもって無相の悟にかない、事相の行をもって実相の門に入る。事中に理を得、理中に事を施す。理事縦横自在無礙なり。仏願この功を開発し、凡愚彼の位に合会す。但し相の名を安んずることは唯理唯性の頓教に超過することを顕わさんがためなり。実によって論ぜば理事縦横頓中の頓なり」(浄全一二・一二六上)と述べている。


【参照項目】➡相頓教・性頓教


【執筆者:東海林良昌】