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法然と親鸞

提供: 新纂浄土宗大辞典

ほうねんとしんらん/法然と親鸞

木下尚江の評論。原著は、明治四四年(一九一一)二月一〇日、金尾文淵堂発行。木下尚江は、明治二六年(一八九三)に松本美以みい教会で受洗し、キリスト教社会主義者の論客として名を成した。全二三章からなり、資料からの引用が多く、約半分を占めている。伝記資料は『法然上人全集』などを用いている。背景となる時代描写は、九条兼実日記玉葉』によっているが、原文の漢文を分かりやすく書き直している。この時期の木下は、仏教キリスト教を含めて、もっと一般的な宗教改革の志を募らせていた。矢吹慶輝は、木下が『法然と親鸞』で得た印税を旅費として、京都に旅して法然の遺跡と知恩院を訪れたこと、死の年(昭和一二年)九月二四日の相馬愛蔵・黒光夫妻宛の書簡において「七十年ノ小我砕ケテ微塵ノ如シ 今日謹テ跪テ法然上人念仏行者トナル」と述べていると紹介している。


【所収】『木下尚江全集』八(教文館、一九九三)


【参考】矢吹慶輝「木下尚江翁と法然上人」(『社会思想と信念』明治書院、一九四〇)、芹沢博通「社会主義者の法然論—木下尚江」(『近代の法然論』みくに書房、一九八二)、『明治文学全集四五 木下尚江集』(筑摩書房、一九六五)


【執筆者:小嶋知善】


増谷文雄(一九〇二—一九八七)著。昭和三四年(一九五九)二月、在家仏教協会発行。同三一年より三三年までの法然と親鸞に関する原稿・講演を載録した著述。雑誌『大世界』(世界仏教協会)、『浄土』(法然上人鑽仰会)、『在家仏教』(在家仏教協会)、『NHK放送 人生読本』(国民思想社)に掲載された内容に基づく。増谷は原始仏教道元親鸞の研究で知られている。著書は『根本仏教の研究』、『阿含経』の訳注、『正法眼蔵』の訳注(講談社学術文庫)など多岐にわたる。『増谷文雄全集』全一二巻(角川書店)がある。東京外国語大学教授、大正大学教授、都留文化大学学長を歴任した。


【執筆者:能島覚】


石田瑞麿(一九一七—一九九九)著。昭和五三年(一九七八)五月、秋山書店発行。秋山叢書の一冊。「思想史のなかの親鸞」「親鸞雑記」「法然への学び」と三部の構成に学術雑誌・書籍・新聞に寄稿した法然親鸞に関する論文をまとめたもの。石田は戒律研究の大家であり、なかでも「法然戒律観」(初出は昭和二七年〔一九五二〕)と「法然における二つの性格」(初出は同三六年)は、法然戒律をめぐる議論においては必読の論考である。


【執筆者:能島覚】