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本朝祖師伝記絵詞

提供: 新纂浄土宗大辞典

ほんちょうそしでんきえし/本朝祖師伝記絵詞

四巻。法然入滅後二五年目に成立した法然絵伝。現存中、最古のもの。久留米善導寺蔵。もと二巻仕立てのものを四巻仕立てにした室町後期の写本で『伝法絵』『四巻伝』とも言われる。明治四五年(一九一二)宗祖大師七〇〇年御忌奉修を記念して善導寺より望月信亨校訂『本朝祖師伝記絵詞』と題し刊行され、法然の生涯や遺文、教団史研究に盛んに活用されてきた。第四巻奥書によると、嘉禎三年(一二三七)五月より一一月にかけて、詞書ことばがきを願主である湛空たんくう(六九歳)が執筆、絵を源光忠(観空、三三歳)が描いたもので、この奥書に続く「永仁二年〈甲午〉九月十三日書畢、執筆沙門寛恵〈満七十〉」との記載より、永仁二年(一二九四)寛恵伝写本であることが明らかとなる。『本朝祖師伝記絵詞』と通称されているのは、第一巻と第二巻の内題および外題による。この内外題は江戸時代の異筆であり、本文と同筆の第三巻内題は「伝法絵流通るずう」となっている。書名の「流通」には教えを伝え弘めるという意味がある。絵図中に詞書を説明文のように配置していて、湛空は巻二の奥書(上巻識語)に「この絵画を披見し、その詞を説くものは弥陀三尊礼拝し、大経の文を読むべし(趣意)」と記しているように、いわゆる鑑賞的絵巻ではなく、法然の生涯と念仏の教えの布教伝道のために制作されたもので、絵解きされていた。同系統の絵伝に、戦後紹介されたがまもなく分散してしまった善導寺本の第三・四巻にあたる鎌倉後期の残欠本『法然上人伝法絵』下(『国華本』)がある。


【所収】『本朝祖師伝記絵詞』(善導寺、一九一二)、法伝全、中井真孝編『善導寺蔵〈本朝祖師伝記絵詞〉本文と研究』(佛教大学アジア宗教文化情報研究所、二〇〇七)


【参考】梅津次郎「新出の法然上人伝法絵について」(『国華』七〇五、一九五〇、後に同著『絵巻物叢考』中央公論美術出版、一九六八、収録)、井川定慶『法然上人絵伝の研究』(法然上人伝全集刊行会、一九六一)、三田全信『成立史的法然上人諸伝の研究』(光念寺出版部、一九六六)、中井真孝『法然伝と浄土宗史の研究』(思文閣出版、一九九四)、今堀太逸『本地垂迹信仰と念仏』(法蔵館、一九九九)、同『権者の化現』(思文閣出版、二〇〇六)【図版】巻末付録


【参照項目】➡伝法絵


【執筆者:今堀太逸】