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伝法絵

提供: 新纂浄土宗大辞典

でんぼうえ/伝法絵

法然の生涯を絵解きするために制作された絵伝。「伝法絵」を書名に持つ絵伝としては、関東布教のために鎌倉八幡宮本社周辺において湛空が嘉禎三年(一二三七)に制作した旨の奥書を持つ久留米善導寺蔵『伝法絵流通』(室町期写本、『本朝祖師伝記絵詞』四巻)と鎌倉後期の写本である『法然上人伝法絵』下(『国華本』)が伝来する。善導寺本の書名の「流通るずう」には教えを伝え弘めるとの意味がある。絵図中に詞書が説明文のように配置されているのが特色で、『国華本』の本文中には「…是也これなり」との絵を指示する詞が散見する。津市高田専修寺所蔵の『法然上人伝法絵』下は流布の「伝法絵」の詞書を永仁四年(一二九六)に筆録したもので、『法然聖人絵』(『弘願本』)の詞書に影響を与え、誤字まで一致する。真宗寺院に伝来する竪幅仕立ての絵伝には「伝法絵」系統のものが多い。


【資料】『真宗重宝聚英』六(同朋舎出版、一九八八)、法伝全


【参考】梅津次郎「新出の法然上人伝法絵について」(『国華』七〇五、一九五〇、後に同『絵巻物叢考』中央公論美術出版、一九六八、収録)、宮崎円遵「法然上人伝の絵解と談義本」(井川定慶博士喜寿記念会編『日本文化と浄土教論攷』同喜寿記念会出版部、一九七四)、今堀太逸「法然上人『伝法絵流通』と関東」(同『本地垂迹信仰と念仏』法蔵館、一九九九)


【参照項目】➡本朝祖師伝記絵詞


【執筆者:今堀太逸】