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後唄

提供: 新纂浄土宗大辞典

ごばい/後唄

前唄(始段唄)に対する語で、法要の終結部で唱えるのでこの名がある。俗に処世界梵ともいう。仏徳を讃歎して法要を終えるときに用いる。「世界虚空しょせかいじょきょこう 蓮華不着水じょれんかふちゃくすい 清浄超於彼しんせいせいちょうよひ 稽首礼無上尊けいしゅれいぶしょうそん」(『超日明三昧経』上、正蔵一五・五三二上)。この際に唱える「心浄偈」は能化回向の意では使用していない。呂曲・壱越調出音徴いちこつちょうしゅっとんちょう。「引声阿弥陀経」の合殺かっさつ回向の次に唱える。これとは別に、天下泰平・万民豊楽等を祈念するような祝聖会に、「天下和順 日月清明 風雨以時 災厲󠄂不起」の前伽陀を用いた場合、法要の終結部で「国豊民安 兵戈無用 崇徳興仁 務修礼譲」の後唄を唱えて対とすることもある。祝聖文の旋律は、マクリが先行した色回しや、マクリ・イロ・タレを一息で大きく緩やかに唱える大回しが特色となっている。曲調は律曲・双調出音羽。天台宗の常用『例時作法』には後唄を略節とし、浄土宗西山派においては誦経後の回向文のことを後唄と称している。


【参考】『浄土宗声明集』(知恩院、一九八七)


【参照項目】➡心浄偈祝聖文


【執筆者:清水秀浩】


十夜会古式」や「引声阿弥陀経」の回向文の後に唱える声明。「世界虚空しょせかいじょきょこう 蓮華不着水じょれんかふちゃくすい 清浄超於彼しんせいせいちょうよひ 稽首礼無上尊けいしゅれいぶしょうそん」。染まることのない清浄なる心を持った仏に敬礼するの意。円仁比叡山に伝えたとする例時作法にあり漢音を用いて唱える。『魚山声明集』では「律曲出音しゅっとん羽」と指示している(正蔵八四・八一五下)。浄土宗には、明応四年(一四九五)祐崇の伝えた「引声阿弥陀経」とともに伝わり、『法要集』(下・三一一)には承応二年(一六五三)の恵隆の譜が載る。『礼讃声明音譜』と『縁山声明集』(増上寺、一九九八)には縁山後唄等が五線譜として採譜されている(双調出音変徴そうじょうしゅっとんへんち)。前唄(始段唄)に対しての後唄であるが、後唄のみが唱えられることもある。


【録音資料】千葉寛定『声明』(声明愛好会「ピッパラ」、一九七七)


【参照項目】➡心浄偈


【執筆者:巖谷勝正】