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往生西方浄土瑞応刪伝

提供: 新纂浄土宗大辞典

おうじょうさいほうじょうどずいおうさんでん/往生西方浄土瑞応刪伝

一巻。『浄土瑞応伝』『瑞応刪伝』ともいう。本書序文によれば文諗もんしん少康の共編という。本書は迦才かざい浄土論』や道宣続高僧伝』などから特に往生浄土奇瑞に関する記事を抽出して編纂された四八人(実際には五三人)の往生人伝であり、中国浄土教における最初の往生人伝として整った体裁を有しており、後の中国ならびに日本の浄土教に大きな影響を与えた。本書の編集について、京都国立博物館所蔵(守屋コレクション)本の跋文ばつぶんには「呉越国水心禅院主興福資利大師賜紫道詵敬造捨」、続浄本の跋文には「呉越国水心禅院主興福資利大師賜紫道詵敬造撰」とあることから、文諗と少康が編纂した原書を道詵という人物が現在の形態に整理したとも考えられている。あるいは京都国立博物館所蔵本の跋文のように道詵が原書の内容を取捨選択した可能性もある。また京都国立博物館所蔵本、大正蔵本(康治二年〔一一四三〕写高野山宝寿院蔵本が底本)、続浄本の跋文によると、呉越国に留学していた比叡山の日延が天徳二年(九五八)に将来していることが、京都国立博物館所蔵本によると長承三年(一一三四)に転写が行われ、大正蔵本と続浄本から貞永元年(一二三二)に釈子日真が開版していることが分かる。


【所収】続浄一六、正蔵五一


【参考】小笠原宣秀「瑞応刪伝の諸問題」(『支那仏教史学』三—三・四、一九三九)


【執筆者:柴田泰山】