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安心派・起行派

提供: 新纂浄土宗大辞典

あんじんは・きぎょうは/安心派・起行派

法然門下の分類概念。望月信亨が『略述浄土教理史』において用いたのを嚆矢とする。法然門下には多くの異流分派があるが、望月はそれらの思想的特徴を「信か行か」の評価軸で大別し、信を第一とみる者を安心派、行に重きを置く者を起行派と呼んだ。安心派として幸西証空親鸞が、起行派として隆寛聖光長西の名が挙げられている。法然門下の分類概念としては最も基本的なもので、後に石井教道の内門転派(隆寛幸西親鸞・西山派西谷義)・外門転派(聖光長西・西山派深草義)、石田充之の自力強調派(聖光長西)・他力強調派(隆寛幸西証空親鸞)などの区分が提起されたが、いずれも安心派・起行派の区分を基調としそれを改変修訂したものと捉えられる。なお近年提起された顕密体制論では、当時主流だった「顕密仏教」との対立関係の度合いという、従来とは全く違った評価軸が導入され、法然及びその門下は「異端派」(法然幸西親鸞など)と「改革派」(その他大半の門弟)に分類されたが、この分類の適否については異論も多い。


【参考】望月信亨『略述浄土教理史』(浄土教報社、一九二一)、石井教道『選択集の研究 総論篇』(平楽寺書店、一九五一)、石田充之『鎌倉浄土教成立の基礎研究』(百華苑、一九六六)、黒田俊雄「中世における顕密体制の展開」(『黒田俊雄著作集』二、法蔵館、一九九八)


【参照項目】➡安心門・起行門法然門下の異流


【執筆者:吉田淳雄】