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提供: 新纂浄土宗大辞典

き/基

唐・貞観六年(六三二)—永淳元年(六八二)一一月一三日。唯識宗(慈恩宗、法相宗)の初祖。窺基ききともいうが、碑文・撰号・古写経等はいずれも基または大乗基であることから、基の一字名が正しいとされる。慈恩大師と称される。長安の人。先祖は西域の出身。貞観二二年(六四八)一七歳で出家して玄奘に師事。梵語を修学し、顕慶元年(六五六)二五歳で訳場に列する。同四年『成唯識論』翻訳の際に筆受となり、『成唯識論述記』『成唯識論掌中枢要』の両注釈書を著して、その解釈を確立した。基の教学の特徴としては、三時教判による唯識宗の確立、五姓各別ごしょうかくべつ説による一切皆成いっさいかいじょう説の批判、五重唯識観などの新説の提唱などがあげられる。他に『般若波羅蜜多心経幽賛』『妙法蓮華経玄賛』『瑜伽師地論略纂』『因明入正理門論疏』『大乗法苑義林章』など多数の著作があり、「百本の疏主」と称された。弟子に慧沼がいる。なお『阿弥陀経』の注釈書である『阿弥陀経通賛疏』『阿弥陀経疏』と、西方往生を勧める『西方要決釈疑通規』の三疏は、基が兜率往生を願っていたことや、兜率往生を勧める『弥勒上生経疏』等の著作に西方往生を難事としていることから、いずれも真撰ではなく後人の仮託であると考えられる。


【資料】『大慈恩寺三蔵法師伝』(正蔵五〇)


【参考】渡辺隆生「慈恩大師の伝記資料と教学史的概要」(『慈恩大師御影聚英』法蔵館、一九八二)


【参照項目】➡西方要決釈疑通規阿弥陀経疏阿弥陀経通賛疏


【執筆者:吉村誠】