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唯願別時意

提供: 新纂浄土宗大辞典

ゆいがんべつじい/唯願別時意

発願のみによって浄土往生するというのは、如来衆生を導くための方便説(別時意)であり、願と行とが具足した実践行でなければ即得往生は不可能であるということ。十念往生別時意説ともいう。これは中国隋・唐代に摂論学派の人師によって提唱された説であり、真諦訳『摂大乗論釈』六に「ただ発願のみに由って、安楽仏土において、かしこに往って生を受くることを得。釈して曰く、前のごとくまさに知るべし。これを別時意と名づく」(正蔵三一・一九四中)とあるのを典拠とする。このような唯願別時意説に対して、善導は『観経疏』玄義分に「今この『観経』の中の、十声の称仏は、すなわち十願十行有って具足す。云何が具足する。〈南無〉と言うは、すなわちこれ帰命、またこれ発願回向の義。〈阿弥陀仏〉と言うは、すなわちこれその行なり。この義を以ての故、必ず往生を得」(聖典二・一八二/浄全二・一〇上~下)と述べ、『観経下品下生に説かれる十念は十願と十行とを具備したものであるから別時意ではないと反論している。


【参照項目】➡別時意会通


【執筆者:杉山裕俊】