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初夜無常偈

提供: 新纂浄土宗大辞典

しょやむじょうげ/初夜無常偈

善導往生礼讃』の無常偈の一。初夜礼讃偈を終えるにあたり、この世のあらゆるものが無常であることを説く偈文。「煩悩深無底ぼんのうじんむてい 生死海無辺しょうじかいむへん 度苦船未立どくせんみりゅう 云何楽睡眠うんがぎょうすいめん 勇猛勤精進ゆうみょうごんしょうじん 摂心常在禅せっしんじょうざいぜん」(浄全四・三六〇上)。この偈文の典拠は『坐禅三昧経』上の「煩悩深無底 生死海無辺 度苦船未弁 安得楽睡眠…当宜懃精進」(正蔵一五・二七〇下)であると考えられ、第六句は善導の趣意による。大意は、「我々を悩ます煩悩は計り知れないほど深く、生死輪廻を繰り返すさまは果てのない大海のようである。この苦しみの世界から覚りの世界へと旅立つ船はいまだ出立してはいないのに、どうして怠惰な日々を送ったままでよかろうか。勇猛に精進し、心を集中させて往生を求めなさい」。初夜礼讃偈の最後に維那が座したまま「諸衆等聴説初夜無常偈」と唱え、長跪しながらこの無常偈を独唱し、接足作礼せっそくさらいする。


【執筆者:石上壽應】