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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0065A01: 色色の好物を尋集め置て常に與へくはせよ。時なら
Z15_0065A02: ぬ物を願ふは病者の常の習也。彼を與へざれば心を
Z15_0065A03: 留むる故なり。されば看病の功德は計なき事にて侍
Z15_0065A04: るにこそ。佛曰。若人如來と父母と病者とを供養する
Z15_0065A05: 功德は。我說盡し難しと曰へり。況や病ひを受たら
Z15_0065A06: ん親を供養する其功德は。まして計なき事なり。是正
Z15_0065A07: く因果經を引て御覽ずべし。又看病の者も心あれ。病
Z15_0065A08: 者によしなき言ばを盡さする事なかれ。看病の人の
Z15_0065A09: 中に殊に囂く心惡からん人をば努努よすべからず。
Z15_0065A10: 中にも酒肉五辛此等を食したらん人不寄。若來れ
Z15_0065A11: ば魔緣便りを得て。諸の(ヲソレ)あるべきが故なり。酒肉
Z15_0065A12: と者酒としゝむらとなり。五辛と者大びる。山のき。
Z15_0065A13: にら。いえのき。くれのをも也。又曰。からし大根。(アララキ)
Z15_0065A14: 加樣のくさき物。或はくさびらも惡しと云人あり。
Z15_0065A15: 又病者有て此等を願ふ事あらば。先心安尋ん由を答
Z15_0065A16: へて。さて後に彼に似て然もことならん物を與て。
Z15_0065A17: 心をすかして後心得て云べし。仰られし物は臨終の
Z15_0065B01: 行儀に障り也と申すと言へ。雖然其氣色に隨ふべし
Z15_0065B02: 兎角いはざれ。其ならぬ物をも食へばとて。あくほ
Z15_0065B03: どには食せざれ。又食すとも色色樣樣にして構へて
Z15_0065B04: 食事を得させよ。是則力を失せじが爲なり。又夏冬
Z15_0065B05: の折節を顧みよ。次に病人をば家の外に構へて出す
Z15_0065B06: 事なかれ。病人は厠などに行て。たをれて死する事
Z15_0065B07: 多くあるが故なり。必病人の爲に心安からん人を。
Z15_0065B08: 一人づゝ結び具して守れと云り。護らん間は香を燒。
Z15_0065B09: 時を知て一時二時など番にもるべし。久ければ眠り
Z15_0065B10: て互に惡きが故なり。若し急ならぬ病ならば。善知識
Z15_0065B11: をば病者の聲の聞ゆる程に休めよ。是は最後の時の
Z15_0065B12: 爲なり。さて心あらん者。病人は病者の前。知識の居
Z15_0065B13: 所にかはり居て。少しも病者の眼に目をはなさざれ。
Z15_0065B14: 人の正く終る時をば見知る事かたし。又病者のつよ
Z15_0065B15: き由するを不知して誤るが故なり。人は必病ひの宜
Z15_0065B16: き樣にして終る事多し。是を努努油斷する事なかれ。
Z15_0065B17: 又病者も思ふべし。設ひ病の苦しみは有と云とも。

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