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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0057A01: によりて生死に留るなり。一には親子夫婦若は弟子
Z15_0057A02: 眷屬諸の財物を愛し惜む心是なり。是を境界愛と云
Z15_0057A03: ふ。二には我身を愛し命を惜む心。是を自體愛とい
Z15_0057A04: ふ。三には正く命おはる時此三界の內に生るべき所
Z15_0057A05: の樣樣に顯るゝに依て猥りに心を移して。後に生れ
Z15_0057A06: んと思ふ心なり。是を當生愛と申也。此三種の愛心に
Z15_0057A07: よりて生死に留まり。三界を厭ひはなれずして難
Z15_0057A08: 苦を受るなり。是を明かに知て不隨。先づ今此世
Z15_0057A09: を厭ふ事は別れ安くして難逢故。亦淨土を願ふ事は
Z15_0057A10: 行易して別なきが故なり。又今生にも往生の人の子
Z15_0057A11: 孫は七代迄歎きしと申ぬれば。誠に是れ何の歎かあ
Z15_0057A12: るべき。又家內の寶は〓朽失ぬるといへ共。極樂の
Z15_0057A13: 寶は永く盡せず。七寶莊嚴の宮殿樓閣なり。故に厭ひ
Z15_0057A14: ても可厭は今世。尙願ても可願は淨土なり。次に此
Z15_0057A15: 肉團不淨の身を改めて。彼金色淸淨の(ハダエ)とならん事
Z15_0057A16: 爭かいたはしかるべき。次に努努最後に心の引所に
Z15_0057A17: 心を移して。亦阿鼻の舊里に歸るべからず。是又本
Z15_0057B01: 有の心なり。是皆三界の內の執著にして。都ては一心
Z15_0057B02: の成所なり。能能是を厭べし。設ひ極樂を願ふ共。
Z15_0057B03: 此三界を厭はずんば。譬へば只今の出船のともづな
Z15_0057B04: を。とかずして船を渡さんとするが如し。又穢土を
Z15_0057B05: 厭ふと云共淨土を願はずんば(ナカエ)を背ひて車をやらん
Z15_0057B06: とするに似たりと云り。此故に永く三界を厭ふて殊
Z15_0057B07: に極樂を願べきなり。此時厭はずんば誠に愚なり。
Z15_0057B08: 身を愛し。財を惜む人誰か又歸りき。是一生猶耻あ
Z15_0057B09: り。何ぞ最後の限りまでの貪欲をや。恐くは其心を
Z15_0057B10: 知て而も隨ふ事なかれ。若隨はずんば。又其失有べ
Z15_0057B11: からず。昔も死人の顏に。はいありく蟲ありき。是
Z15_0057B12: は我身に愛執を留めて。我身に生じたる蟲なり。又
Z15_0057B13: 女人の鼻より白き蟲と成て出たりし人あり。是は我
Z15_0057B14: 妻に愛執を留めて死したりし人なり。經に侍べりけ
Z15_0057B15: り。老病の時。我も人も用意の心有て惜と思ひぬべ
Z15_0057B16: からん財。又妻子なんどをば尋ざらん外に見すべか
Z15_0057B17: らざるなり。經に曰。

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