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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0054A01: 文の意は。若信有て憍慢を離れば。心を發すに佛を
Z15_0054A02: 見奉。若諂誑不信の心ある者。億劫尋求むとも逢事
Z15_0054A03: を不得と云り。是れ名利の二のきづなにさえらるれ
Z15_0054A04: ばなり。其心をはなるべき也。昔佛母の恩を報ぜん
Z15_0054A05: が爲に。無量の聖衆と俱に忉利天に登り。歡喜園の
Z15_0054A06: 中の質多羅樹下に御坐し給ひき。先文殊師利童子を
Z15_0054A07: めして申し給。我昔閻浮提の王宮にして。生れて七日
Z15_0054A08: と申せしに。母におくれ奉り。伯母の憍曇彌にそだ
Z15_0054A09: てられ奉つて人となり。佛道を求て佛に成き。忉利
Z15_0054A10: 天に母の生て。いますと云事を知て。參て侍べるな
Z15_0054A11: りと。文殊師利童子佛の勅を承て摩耶の()(モト)に參。此
Z15_0054A12: 由を申給ふに。摩耶忽に無量の天人と俱に佛の御前
Z15_0054A13: に趣き給ふ。漸く彼に近く程にも成ければ。佛母の摩
Z15_0054A14: 耶を拜み奉り給はんとて。大にさはぎ座を立て禮敬
Z15_0054A15: し奉り給ふ。摩耶も佛を拜み奉り給ひて。憐の御氣色
Z15_0054A16: 色に出る程に見えさせ給ひき。大方諸の天人聖衆數
Z15_0054A17: 多の菩薩達親子の契り恩愛の情け哀成事に見奉て。
Z15_0054B01: 各各聲聲に淚を流さずと云事なし。時ならね共。歡
Z15_0054B02: 喜園に忽に華さき實なり。梢を吹風五妙の音樂を奏
Z15_0054B03: しき。さて佛申給ふ樣は。幼なかりし當初(ソノカミ)。母のおは
Z15_0054B04: しまさぬ事ぞと承りしより道心を發して難行苦行し
Z15_0054B05: てかくとの給ふ。又摩耶は太子をうみ置奉つて。いつ
Z15_0054B06: しか宮の內を別れし心只おぼしやれ。猶しうみ奉り
Z15_0054B07: し功德によりて天上し加樣になんと申させ給ふ。仰
Z15_0054B08: 有事共終りて。さても我爲に法を說給へ。承はらんと
Z15_0054B09: 申給ひしかば。時に佛大光明を放て三千世界を照し
Z15_0054B10: て。母の御爲に法を說給き。先づ三界は安き事なし。
Z15_0054B11: 爰に生るるは名利の執心によりてなり。生死は無常
Z15_0054B12: なり。財寶は我物に非ず。我無常に隨ふ日は散失せ
Z15_0054B13: ずと云財らなし。衆生かかる空しき諸法を實にあり
Z15_0054B14: と思が故に。生死の業をなす故に報を得なりと說給
Z15_0054B15: ひしかば。佛の力によりて摩耶は覺を開き給ひぬ。
Z15_0054B16: 我昔より六塵の境界にたぶらかされて。苦を受る事。
Z15_0054B17: 或は焰の中にむすほふれ。或は自らうむ子を食んと

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