浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z15_0054A01: | 文の意は。若信有て憍慢を離れば。心を發すに佛を |
Z15_0054A02: | 見奉。若諂誑不信の心ある者。億劫尋求むとも逢事 |
Z15_0054A03: | を不レ得と云り。是れ名利の二のきづなにさえらるれ |
Z15_0054A04: | ばなり。其心をはなるべき也。昔佛母の恩を報ぜん |
Z15_0054A05: | が爲に。無量の聖衆と俱に忉利天に登り。歡喜園の |
Z15_0054A06: | 中の質多羅樹下に御坐し給ひき。先文殊師利童子を |
Z15_0054A07: | めして申し給。我昔閻浮提の王宮にして。生れて七日 |
Z15_0054A08: | と申せしに。母におくれ奉り。伯母の憍曇彌にそだ |
Z15_0054A09: | てられ奉つて人となり。佛道を求て佛に成き。忉利 |
Z15_0054A10: | 天に母の生て。いますと云事を知て。參て侍べるな |
Z15_0054A11: | りと。文殊師利童子佛の勅を承て摩耶の御所に參。此 |
Z15_0054A12: | 由を申給ふに。摩耶忽に無量の天人と俱に佛の御前 |
Z15_0054A13: | に趣き給ふ。漸く彼に近く程にも成ければ。佛母の摩 |
Z15_0054A14: | 耶を拜み奉り給はんとて。大にさはぎ座を立て禮敬 |
Z15_0054A15: | し奉り給ふ。摩耶も佛を拜み奉り給ひて。憐の御氣色 |
Z15_0054A16: | 色に出る程に見えさせ給ひき。大方諸の天人聖衆數 |
Z15_0054A17: | 多の菩薩達親子の契り恩愛の情け哀成事に見奉て。 |
Z15_0054B01: | 各各聲聲に淚を流さずと云事なし。時ならね共。歡 |
Z15_0054B02: | 喜園に忽に華さき實なり。梢を吹風五妙の音樂を奏 |
Z15_0054B03: | しき。さて佛申給ふ樣は。幼なかりし當初。母のおは |
Z15_0054B04: | しまさぬ事ぞと承りしより道心を發して難行苦行し |
Z15_0054B05: | てかくとの給ふ。又摩耶は太子をうみ置奉つて。いつ |
Z15_0054B06: | しか宮の內を別れし心只おぼしやれ。猶しうみ奉り |
Z15_0054B07: | し功德によりて天上し加樣になんと申させ給ふ。仰 |
Z15_0054B08: | 有事共終りて。さても我爲に法を說給へ。承はらんと |
Z15_0054B09: | 申給ひしかば。時に佛大光明を放て三千世界を照し |
Z15_0054B10: | て。母の御爲に法を說給き。先づ三界は安き事なし。 |
Z15_0054B11: | 爰に生るるは名利の執心によりてなり。生死は無常 |
Z15_0054B12: | なり。財寶は我物に非ず。我無常に隨ふ日は散失せ |
Z15_0054B13: | ずと云財らなし。衆生かかる空しき諸法を實にあり |
Z15_0054B14: | と思が故に。生死の業をなす故に報を得なりと說給 |
Z15_0054B15: | ひしかば。佛の力によりて摩耶は覺を開き給ひぬ。 |
Z15_0054B16: | 我昔より六塵の境界にたぶらかされて。苦を受る事。 |
Z15_0054B17: | 或は焰の中にむすほふれ。或は自らうむ子を食んと |