ウィンドウを閉じる

Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0053A01: び。()(クボ)の枕の邊には浮思こそまさりけれ。大方憐
Z15_0053A02: む親の有時は華の影に遊ぶ蝶の如し。悲む友のなき
Z15_0053A03: 時は空き園を廻る鸚に似たり。是身に知れて人を愍
Z15_0053A04: み。心をかけて情あるべし。其故は上下の差別は有
Z15_0053A05: といへ共。歎きの差別は有にあらじ。衆生の形は替
Z15_0053A06: れど淚の色は替らねばなり。如何なる寂滅の理り顯
Z15_0053A07: す情も。有爲の悲は難忘。生死を不知武士も。別の
Z15_0053A08: 泪は押へ難し。哀なる哉。實に樹にすむ鳥も終には
Z15_0053A09: 立ぬ事なし。夫妻瓦の如し。あひあふて離れぬはな
Z15_0053A10: し。つらつら昔を思へばうらめしく。行末を思へば
Z15_0053A11: (アチキ)なし。かかるなからえして。然もあればなり。浮
Z15_0053A12: 世の難捨事。只夢幻の中に劒を玉に取が如し。其故
Z15_0053A13: は思をとをせば心を苦め。又捨んとすれば暇非ず。
Z15_0053A14: 加樣にをそろしくうらめしき所なりと思ひて。心を
Z15_0053A15: 一にして佛の御名を唱へて。早く目出度所に生れん
Z15_0053A16: と思べき也。百千の事を見ずとも、一心に阿彌陀の
Z15_0053A17: 六字を持んには(シカ)じ。
Z15_0053B01:   南無阿彌陀佛  十念
Z15_0053B02: 第十五に佛道に憍慢の心おこるを怖るべしと云は。
Z15_0053B03: 其程程に隨て證ぜざるを證したりと思ひ。心得ざる
Z15_0053B04: を心得たりと思ひ。乃至道心の起に付ても內心にも
Z15_0053B05: 顯れても。是怖れても恐るべきは憍慢の心なり。佛道
Z15_0053B06: の障り魔緣のあらそひ此一事に依るなり。是を知て
Z15_0053B07: 然も隨はずんば其過有べからず。智論に云。內に過な
Z15_0053B08: ければ。外より魔不來。くさき物なきには蠅集まら
Z15_0053B09: ざるが如しと云り。是皆心ある程の人の根に入ん物
Z15_0053B10: は葉に出んと恐るる處なり。往生要集に曰く。極樂を
Z15_0053B11: ねがはん人は。譬へば心ならず我國を離れて敵國に
Z15_0053B12: とられ行たらんに。彼國より敵に不知して逃歸らん
Z15_0053B13: と思はんが如く。此世を厭ひ極樂を欣べきなりとぞ
Z15_0053B14: 云る。取意若此過を離れん者は生死を離れ菩提に至
Z15_0053B15: ん。何を以知とならば。華嚴經に曰。
Z15_0053B16: 若有信解離憍慢   發心卽得見如來
Z15_0053B17: 若有諂誑不信心   億劫對求莫値遇

ウィンドウを閉じる