浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z15_0052A01: | つるべの繩は石のゐげたをきるといへり。高きもい |
Z15_0052A02: | やしきも是にて心得べし。又法華經に曰。 |
Z15_0052A03: | 乃至童子戲。若草木及筆。或以指爪甲。而畫作佛像。 |
Z15_0052A04: | 如是諸人等。漸漸積功德。具足大悲心。皆已成佛道文 |
Z15_0052A05: | 文の意は乃至童子の戲れにも。若は草木及筆を以て |
Z15_0052A06: | も。或は指の爪の甲を以て佛の形を作。如レ是の人漸 |
Z15_0052A07: | く功德を積。大悲を具足して皆佛道を成ずと說給へ |
Z15_0052A08: | り。老たるも少も撰ばざる事是を以て知ぬべし。龜の |
Z15_0052A09: | 甲の上に積たる塵を名づけて蓬萊山と云ふ。自然に |
Z15_0052A10: | 念佛の功の積れるを又往生の業と申す也。或に云く |
Z15_0052A11: | 佛道を修行せん事は。琴柱を立る樣なるべしと云り。 |
Z15_0052A12: | 是は餘り急ならず緩ならずあれといへる意なり。又 |
Z15_0052A13: | 云く。人は必ず程に隨て習たつる事あり。彼を習て心 |
Z15_0052A14: | 得たる如に。是を修行せよとぞ侍へる。抑佛かく懃に |
Z15_0052A15: | 敎へ給ふは誰が爲ぞや。生死に迷える我等が爲なり。 |
Z15_0052A16: | 昔此世界暗き時侍べりき。其時始て阿彌陀如來の二 |
Z15_0052A17: | 人の御子に。日は觀音。月は勢至なり。是を哀んで |
Z15_0052B01: | 方方につかはして。日は出ても入。月は滿ても闕とさ |
Z15_0052B02: | とれと度度示し給へるなり。是によりて天か下に住 |
Z15_0052B03: | む我も人も云何。此佛を日日夜夜に忘れ奉るべき耶。 |
Z15_0052B04: | 平生の朝には山の端より出て山 照し給ふ。命終の |
Z15_0052B05: | 夕には。西より來て西へ導き給ふ。或に云く。是を勤 |
Z15_0052B06: | めずして。空く死なば後に必悔む心あるべしと云。 |
Z15_0052B07: | 太賢ノ疏取レ意ヲ然るに我等世路に理を紛らかされ。名利に實 |
Z15_0052B08: | の心はとられて。旦には持つといへども。暮には破 |
Z15_0052B09: | り。暮には心を澄すといへ共。曉には又心亂る。か |
Z15_0052B10: | やうに月日のはこぶ。夜晝の移り付ても無常を進め。 |
Z15_0052B11: | 明暮に付ても命をせむるに。彌思を述て空く過ん事。 |
Z15_0052B12: | 實に愚かなる哉。墓なき哉。後をも不レ知かなや。其 |
Z15_0052B13: | 故は斷金の契をせし人も。芝蘭の語を成す中も。徒ら |
Z15_0052B14: | に成て去にし後は來る事もなし。隱れしも顯れず。 |
Z15_0052B15: | 有もあるに有べからず。自隱れし人を相見し姿は夢 |
Z15_0052B16: | にこそ見ゆる樣なれども。中中よしなきかなや。昔 |
Z15_0052B17: | の歎き今と覺て鴛鴦も衿の中には人知ず淚にむせ |