浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z15_0024A01: | ける。其とき此人大音聲を擧て情なき哉。今日閻魔王 |
Z15_0024A02: | の導師と成て。母を再び地獄にをとすとさけびけれ |
Z15_0024A03: | ば。軈て同樣にて出しける其時に。さても何して此苦 |
Z15_0024A04: | をばまぬき奉るべきと問ければ。母の云。法華經を一 |
Z15_0024A05: | 日に書て供養するにしくはなしとぞ答へける。かく |
Z15_0024A06: | て其後東西も見えず覺へず去ければ。しるべに手を |
Z15_0024A07: | 引るる樣にして泣泣閻魔王に參てありつる次第を申 |
Z15_0024A08: | ければ。閻魔王殊に哀なる氣色にて是は我する事に |
Z15_0024A09: | 非ず。衆生自罪を造て自ら受る所なりと申さる。さ |
Z15_0024A10: | てとくとく娑婆に歸て見ければ。弟子共は。師匠の活 |
Z15_0024A11: | たるを見て悅びつつ泪を流しけり。亦死したる師匠 |
Z15_0024A12: | は母に二度あひ苦める事を歎けり。何と人問ければ。 |
Z15_0024A13: | 有つる事の次第然然と云て。頓て其日に彼經を書供 |
Z15_0024A14: | 養したりければ其夜に。毋の旣に得脫しぬとぞ夢に |
Z15_0024A15: | 見けると記して候是は數多に申す一說也大方此經の故に頓て佛に |
Z15_0024A16: | 成事は。事新く申すに不レ及。さはて孝養の爲に親し |
Z15_0024A17: | からん人をば。只僧に成べき事なり。其故は。目連衣 |
Z15_0024B01: | を染て佛の御弟子とならずば何か母の生たる所を知 |
Z15_0024B02: | て餓鬼道の苦患をぬかむ。又此人に袈裟を懸よとを |
Z15_0024B03: | きてずば八熱地獄に今までも母にえてこそあらまし |
Z15_0024B04: | か。加之一子出家七世父母皆得解脫と。此文の意は |
Z15_0024B05: | 獨の子出家すれば七代まで皆佛に成ことを得と佛仰 |
Z15_0024B06: | られたるをや。されば唐土にも我朝にも昔より今に |
Z15_0024B07: | 至るまで位を可レ卽王子をかきても。さのみこそ見え |
Z15_0024B08: | 侍れ。是至れる實の孝養なれや。子罪を造は親の墮た |
Z15_0024B09: | る地獄の焰彌そ增なる。追修善根の可レ有樣あらあら |
Z15_0024B10: | 如レ此。又何況現在の孝養報恩にをきては親り可レ在。 |
Z15_0024B11: | 經に云く。當時の善根は十分に十分なからえ。後の萬 |
Z15_0024B12: | 善は半か半たにも不レ得と云へり。凡恩の酬契の哀な |
Z15_0024B13: | る事は一つ木陰にやすみ。同じ流を汲むだにも皆是 |
Z15_0024B14: | 前世の契と申たり。況や親子と成。師弟子と成したし |
Z15_0024B15: | き中は此をぼろげの緣に非ず。爾に今の度虛して相 |
Z15_0024B16: | 見る事を止め生へたたりなば。生生世世までも爾べ |
Z15_0024B17: | からず。實にをくれ先立なかはに。しばし留る吾も人 |