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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0024A01: ける。其とき此人大音聲を擧て情なき哉。今日閻魔王
Z15_0024A02: の導師と成て。母を再び地獄にをとすとさけびけれ
Z15_0024A03: ば。軈て同樣にて出しける其時に。さても何して此苦
Z15_0024A04: をばまぬき奉るべきと問ければ。母の云。法華經を一
Z15_0024A05: 日に書て供養するにしくはなしとぞ答へける。かく
Z15_0024A06: て其後東西も見えず覺へず去ければ。しるべに手を
Z15_0024A07: 引るる樣にして泣泣閻魔王に參てありつる次第を申
Z15_0024A08: ければ。閻魔王殊に哀なる氣色にて是は我する事に
Z15_0024A09: 非ず。衆生自罪を造て自ら受る所なりと申さる。さ
Z15_0024A10: てとくとく娑婆に歸て見ければ。弟子共は。師匠の活
Z15_0024A11: たるを見て悅びつつ泪を流しけり。亦死したる師匠
Z15_0024A12: は母に二度あひ苦める事を歎けり。何と人問ければ。
Z15_0024A13: 有つる事の次第然然と云て。頓て其日に彼經を書供
Z15_0024A14: 養したりければ其夜に。毋の旣に得脫しぬとぞ夢に
Z15_0024A15: 見けると記して候是は數多に申す一說也大方此經の故に頓て佛に
Z15_0024A16: 成事は。事新く申すに不及。さはて孝養の爲に親し
Z15_0024A17: からん人をば。只僧に成べき事なり。其故は。目連衣
Z15_0024B01: を染て佛の御弟子とならずば何か母の生たる所を知
Z15_0024B02: て餓鬼道の苦患をぬかむ。又此人に袈裟を懸よとを
Z15_0024B03: きてずば八熱地獄に今までも母にえてこそあらまし
Z15_0024B04: か。加之一子出家七世父母皆得解脫と。此文の意は
Z15_0024B05: 獨の子出家すれば七代まで皆佛に成ことを得と佛仰
Z15_0024B06: られたるをや。されば唐土にも我朝にも昔より今に
Z15_0024B07: 至るまで位を可卽王子をかきても。さのみこそ見え
Z15_0024B08: 侍れ。是至れる實の孝養なれや。子罪を造は親の墮た
Z15_0024B09: る地獄の焰彌そ增なる。追修善根の可有樣あらあら
Z15_0024B10: 此。又何況現在の孝養報恩にをきては親り可在。
Z15_0024B11: 經に云く。當時の善根は十分に十分なからえ。後の萬
Z15_0024B12: 善は半か半たにも不得と云へり。凡恩の酬契の哀な
Z15_0024B13: る事は一つ木陰にやすみ。同じ流を汲むだにも皆是
Z15_0024B14: 前世の契と申たり。況や親子と成。師弟子と成したし
Z15_0024B15: き中は此をぼろげの緣に非ず。爾に今の度虛して相
Z15_0024B16: 見る事を止め生へたたりなば。生生世世までも爾べ
Z15_0024B17: からず。實にをくれ先立なかはに。しばし留る吾も人

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