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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0023A01: の善根をば折々堪んに隨てなすべし。此眞言をば末
Z15_0023A02: の世までも怠るべからず。此方法を以て一寺の僧徙
Z15_0023A03: なんどに付て每日に廿一遍滿させ給へ。孝養の爲に
Z15_0023A04: は七珍萬寳をなげ盡すよりも勝れたと佛も仰られた
Z15_0023A05: り。彼眞言をほめ給へり。是程の孝養はあるべから
Z15_0023A06: ず。亦一日に法華經を書て供養するは目出度事と申
Z15_0023A07: 傳へたり。昔女人ありき。一人の子を儲て僧になし
Z15_0023A08: て。後世を弔はれんと思ひ取て。山寺へ登するとて。
Z15_0023A09: 汝とくとく僧に成て袈裟かけたらん姿を我に見せよ
Z15_0023A10: と云て登せられけり。樣樣物を習ひなんどして僧に
Z15_0023A11: 成て見せん事を思ひて下りき。母を尋ければ今日は
Z15_0023A12: 死て七日に成ぬ。生死無常の情なさは早失給ひきと
Z15_0023A13: ぞ答申ける。かけたる袈裟を見すべき母もなければ
Z15_0023A14: 其悲にしづみつゝ。臂をくだきて學問しける程に。神
Z15_0023A15: 通を得たる程にも成にけり。其時に閻魔王宮に法會
Z15_0023A16: ありて彼人を導師に請じ給ふ。請ずるにかなひて至
Z15_0023A17: りぬ。亦法を說事閻魔王の肝に染ければ。布施は七
Z15_0023B01: 珍萬寶の數を知事なかりけり。時に彼僧御布施をば
Z15_0023B02: 給はらじ。可申旨ありと奏す。時に閻魔王氣色違け
Z15_0023B03: れば。千萬の獄率もけしき荒く見えけれども。此母の
Z15_0023B04: 忍難事を一一に申て今日の御布施には。彼母の生所
Z15_0023B05: を承て一目見んと申す。かく申に任せて冥官を以て
Z15_0023B06: かんがえられければ。焦熱地獄とかんがえ申。彼へ
Z15_0023B07: しるべを給はりて行けり。未行著地獄の方を見けれ
Z15_0023B08: ば。大成山のもゆるが如焰あがりて見ゆ。母を悲に非
Z15_0023B09: んば向ふべき心地もせざりけれ共。命を不顧して行
Z15_0023B10: に地獄の焰にも不燒して事なく近付ければ。閻魔王
Z15_0023B11: の使地獄の門を叩きて。樣樣宣旨なりと云ければ。
Z15_0023B12: 暫あらせて鉾の前にすみの樣なる物を貫きてぞ指擧
Z15_0023B13: たりける。此人願は本の形を見侍んと云ければ。獄
Z15_0023B14: 率活活と唱へき本の形に成ぬ。是を見に目くれ心消
Z15_0023B15: て泪にむせびつつ。昔見せよと宣ひし所の袈裟かけ
Z15_0023B16: たる後かくなんと見せ申けるを。獄率又罪人の隙延
Z15_0023B17: ぬと云て巖なんどを投る樣に。〓て地獄にぞをとし

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