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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0016A01: 智者常懷憂。猶如獄中囚。愚人常歡樂。猶如光音天
Z15_0016A02: 此文の意は。智者は常にうれひを懷事。ひとやの中に
Z15_0016A03: 囚れたるに似たり。愚人は常に樂を成す。事天上の如
Z15_0016A04: しと云云。三には無常の相と者。萬の事は皆遁る事あ
Z15_0016A05: りと云共。無常の一は長く不遁。經に曰。其人の命
Z15_0016A06: のとどまらざる事は山の水よりも過たり。今日はあ
Z15_0016A07: りと云共明日迄は亦難持。何ぞ心を恣にして惡意に
Z15_0016A08: 住せん哉と云へり。實に無常の責るには更に退く方
Z15_0016A09: もなく。迯去に亦處なし。我も人も貴きも賤きも何れ
Z15_0016A10: も更に遁る事あらず。何ぞ一生を徒にせんや。明日
Z15_0016A11: を待にあたはず。樹しづかならんとすれ共風止は不
Z15_0016A12: 靜。子は養はんとすれ共親は不待と云り。殊に哀な
Z15_0016A13: る哉無常の理。齡を譬ふれば。秋の木の葉に似たり。
Z15_0016A14: 命を論ずれば朝の露にことならず。籬の中の菊も霜
Z15_0016A15: に隨て色を變じ。草の上葉に結ぶ露も日の光に當て
Z15_0016A16: 消失ぬ。形には常の主なし。主別れば家あばる。魂に
Z15_0016A17: は常の家なし。籠破ぬれば鳥飛失ぬ。實に理なる哉
Z15_0016B01: 形を背て冥途へ行人は。多百千劫焰の中に悲。さび
Z15_0016B02: しき宿に留まる人は空き床にひとり臥てぞ哀はまさ
Z15_0016B03: る。如何せん。をしき人も。とどまらず。悲我身も不
Z15_0016B04: 殘。只華の色を見ても我身を觀ぜよ。諸行無常是
Z15_0016B05: 生滅法といへる故に。月の前にしても心を靜よ。生滅
Z15_0016B06: 滅已寂滅爲樂とあればなり。返返只出息は入息を不
Z15_0016B07: 待事を。急で日夜に佛法に歸依し。無常の步步に近
Z15_0016B08: づく事を恐て偏に淨土を願ひ給ふべき也。昔佛𣵀槃
Z15_0016B09: に入給ひし事を餘りに母の悲給ければ。釋尊宣はく。
Z15_0016B10: 諸佛雖滅度。法僧寶常住。願母莫憂愁。諦觀無常行
Z15_0016B11: 此文の意は諸佛は滅すといへ共。法僧寶は常にあり。
Z15_0016B12: 願は母愁る事なかれ。明に無常の行を思しろしめせ
Z15_0016B13: とぞ仰られける。中にも人道は今住なれて執心ある
Z15_0016B14: 所なり。明に無常を觀じて必此度厭ひ給ふべし。
Z15_0016B15: 第九に天人の五衰の相をあかさば。是に三あり。一
Z15_0016B16: には欲界天。二には色界天。三には無色界天なり。其
Z15_0016B17: 相廣して具に明しがたし。且く一所を明して其餘を

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