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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0015A01: 氣。亦は山神海神の過目。土公疫癘の祟。或は行住
Z15_0015A02: 坐臥に付。內外自他にふれて都て安き事なし。加之
Z15_0015A03: 病に死を招き。病に依て老も近付。其外に或は弓箭
Z15_0015A04: 兵杖のをそれ。刀劒鉾刄のあやまち。皆是病苦の一
Z15_0015A05: 也。四には死苦と者。凡一切の有情は地水火風の四
Z15_0015A06: 大の成所なり。旣に最後に趣きぬれば。四大分分に
Z15_0015A07: さけ破。五體一一に離去。水大別て去ときは身分悉
Z15_0015A08: くひえこほり。風大はなれ去ときは口鼻より出處の
Z15_0015A09: 息を持がたし。是具に彼苦を受るとき思合べし。五
Z15_0015A10: には別の苦と者。別を惜み契を惜む苦。是殊になさけ
Z15_0015A11: なき苦なり。其故は春の朝には共に花を翫ひ。秋の
Z15_0015A12: 夕には圓月を詠じ。つかの間も見ざれば心をいたま
Z15_0015A13: しめ。亦兼てわかれを惜む中なりと云共。只一時に其
Z15_0015A14: 情を先だつて淚を友とす。誠に人の身に歎きても甲
Z15_0015A15: 斐なく。恨ても叶がたきは。別の苦の成所なり。是
Z15_0015A16: を愛別離苦とは申也。六には怨敵有苦なり。人とな
Z15_0015A17: る日は。大小に付て若は敵きあるを不知人はあれど
Z15_0015B01: も。內外に付て怨敵なき人はなし。是を怨憎會苦と
Z15_0015B02: 申也。七には求不得苦と者。是は殊にうたてしき苦
Z15_0015B03: なり。是故に佛死苦をば受るとも。貧苦をば不
Z15_0015B04: と仰られたる也。實に世間の人の世にあるならひ。
Z15_0015B05: 官位萬の事に付て心に物の叶ふ事なし。耻を思んと
Z15_0015B06: する程に。三惡道の罪を造るなり。是を求不得苦と
Z15_0015B07: 申なり。八には五蘊盛苦と者佛にならぬ。程は五體
Z15_0015B08: 不調なる故に身心共に苦みて安事なし。其故は地の
Z15_0015B09: 下に入てもあられず。水に人れば漂ひ。火に近けば
Z15_0015B10: 燒。風にあたるも病と成。空より落ても損ずる也。さ
Z15_0015B11: ればと云て是を離ては一時も命ある事なし。此故に
Z15_0015B12: 太刀刀と申す萬のをそれ侍なり。かかる危き身を受
Z15_0015B13: て。愚なる人は命をつぐを樂と名づけ。耻を隱して榮
Z15_0015B14: 華と思へり。凡人間の苦にをいては述るに非暇。日
Z15_0015B15: を追て言に計なし。然共心ある人は各身に知れたる
Z15_0015B16: 事なるべし。是を亦何の益があると云ば。此身の厭
Z15_0015B17: はしく成て。佛身を願はしき也。されば經に曰。

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