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Z1510 孝養集 覚鑁 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z15_0002A01: の說給へるを經と申し。菩薩の釋し給へるを論と名
Z15_0002A02: づけ。人の造るをば文と云。又三寶と申すは。佛と法
Z15_0002A03: と僧との三なり。是を都て佛法と申すべき也。其故
Z15_0002A04: は彼十方三世の諸佛菩薩と申も。其說給ふ所の法門
Z15_0002A05: 聖敎と云も。只我等が三界の苦しみの中に有を愍み
Z15_0002A06: て。淨土に參れと。のたまふ事。草木の草に隨ふ露
Z15_0002A07: の如く。人に隨ふ敎へなり。是大恩敎主釋迦牟尼如
Z15_0002A08: 來。不輙して說弘め給ひし事を。諸の菩薩大師達。
Z15_0002A09: 天竺唐土の嶮しく遙かなるより。風波を不厭。危き
Z15_0002A10: 船に命ちを忘れて。是を渡し給ふは。特に我朝の衆
Z15_0002A11: 生を助け給はんが爲なり。是を思ひ知らば善と云。
Z15_0002A12: 思ひ不知を惡と可申なり。
Z15_0002A13: 第二に人の生るるより。終る迄の有樣と者。此世に
Z15_0002A14: 生るる程の人。心に叶ひ久は不急しても有ぬべし。
Z15_0002A15: 又惡道の苦しみななめならずば。極樂を願はでも過
Z15_0002A16: なん。然るに齡ひも憑み少なきに。思ひを遙かに述
Z15_0002A17: て。千秋萬歲と祝ふ事こそ。實に迷ひの至りなれ。
Z15_0002B01: 昔し四人の仙人ありき。各此世に留まる謀を營み。
Z15_0002B02: 獨獨或は山に隱れ海に入。虛空に登り市の中にまぎ
Z15_0002B03: れしか共。かかる仙人だにも四人の中に一人も留ま
Z15_0002B04: りたるはなし。或は唐土に賢かりし御門。此世に久し
Z15_0002B05: くをはせんとする御心を空に知れて。西王母が三千
Z15_0002B06: 年に一度。華さき實なる桃を奉る程に成しか共。終に
Z15_0002B07: 此死を不玉ハ。或は命を惜みて臂をおりしも。其亦爾
Z15_0002B08: なり。是に不限加樣に謀あるもなきも。此世は實に
Z15_0002B09: 假の栖かなり。昔を聞に只留まるは名のみ計なり。
Z15_0002B10: 古しの人の形見には。只書置筆のすさみなり。亦今
Z15_0002B11: も昔とならん事を。事新く墓なしと云も。實にをろか
Z15_0002B12: なり。朝には華を見る人も夕の風に隨ひ。宵には月
Z15_0002B13: を詠る人も曉の雲に隱れぬと云り。實に常ならぬ事
Z15_0002B14: は。只をくれ先立計なり。設ひ久かるべくとも何の益
Z15_0002B15: かあらん。又人久しくは我を悲み我久しくは人を歎
Z15_0002B16: き。恨を殘さずと云事あらじ。されば盛りならんを打
Z15_0002B17: 憑みて何か空く過ん。猶暫留まるとも。世間の苦しみ

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