浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z14_0274A01: | 有ことなり。これ一大事のことなれば。眞實に出離 |
Z14_0274A02: | を。心がけん者は。かの吳信叟が。擊棺の歌を思ふて。 |
Z14_0274A03: | 常々これを工夫すべし。 |
Z14_0274A04: | 譬へば御公家○少もかわるまじ。所喩の位が。知れ |
Z14_0274A05: | ぬ故。能喩の面。すきとすまず。其上。喩への趣きも。 |
Z14_0274A06: | 似つかぬ樣に思はる。凡そ女子などは。富貴に嫁しゆ |
Z14_0274A07: | けども。家鄕を離るゝは。さて悲き者とかや。針神が。 |
Z14_0274A08: | 父母に別れて。六宮に入る時。涙が紅に染しが如し。 |
Z14_0274A09: | 然るに。無生を證れる人の往生は。花見に行く意なれ |
Z14_0274A10: | ば。たゞ心面白くて。いさみこそすれ。血の涙を。こぼ |
Z14_0274A11: | すべき筈なし。又かの女子は。往き了て後も。なを家 |
Z14_0274A12: | 鄕が。戀しきなり。越の鳥は。南枝に巢くふが如し。然 |
Z14_0274A13: | るに。極樂へ往ひて後は。一向に娑婆の戀しきことな |
Z14_0274A14: | し。不潔を出たる者。焉ぞ復その穢を。慕ふべけんや。 |
Z14_0274A15: | これ則ち。法譬の合はぬ。御談義なり。 |
Z14_0274A16: | 卽心念佛の人も○御笑ひやるな。 卽心觀佛の人と |
Z14_0274A17: | は。例の竊吹なり。 さて死ぬる生ると思はず。極樂 |
Z14_0274B01: | へ遊びにゆくと。合點するは。これ卽ち出沒自在にし |
Z14_0274B02: | て。生死を畏れず。園觀に遊べる。見諦の境界なれば。 |
Z14_0274B03: | 內外凡の。及ぶところに非じ。因て深位の往生は。少 |
Z14_0274B04: | も涙の。こぼるべき子細なし。さて。涙をこぼすに。 |
Z14_0274B05: | 二種あり。一には。相似觀行の涙。二には名字博地の |
Z14_0274B06: | 涙なり。これ等の涙は。極めて相應にて。少もをかし |
Z14_0274B07: | きことなければ。たゞともに涙を浮むるなり。然る |
Z14_0274B08: | に。具縳の凡夫が。虎の皮を著て。自位に住せず。每々 |
Z14_0274B09: | 口には。花見に行くといへども。死ぬる時。忽にめそ |
Z14_0274B10: | 〱となり。羊の化が顯はれなば。此は必ず笑はで |
Z14_0274B11: | は。叶ひ候まじ。かの石ひじりが。誓言すれども。少も |
Z14_0274B12: | 觀音の化身とは。信ぜぬ樣に。御笑ひやるなと。口ど |
Z14_0274B13: | めは。せらるれども。とかく法忍の薩埵とは。難レ存候。 |
Z14_0274B14: | さて談義主。自位如何と。顧みられしかば。かくはみ |
Z14_0274B15: | だりに。無生を勸め玉へるや。但しは。鬼にとり著れ |
Z14_0274B16: | し禰冝が。群鬼の御符を。くばるにてはなしや。嗚呼。 |
Z14_0274B17: | 甚だしひかな。今更に。先哲の格言を引て。その謬妄 |