ウィンドウを閉じる

Z1380 即心念仏談義本弁惑編 殊意痴 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z14_0052A01: 宗家の正意にあらず。法苑義林章に。佛本願力。大威
Z14_0052A02: 德力。唯識性相所判矣。今は是本願力なり。得生
Z14_0052A03: 者何夫各見不同あらんや。佛力加するときんば。能
Z14_0052A04: 見の者の業力にはよらず。足指按地思之。穢土旣に
Z14_0052A05: 爾り。況や質を蓮臺に託して。得無生忍の後なるを
Z14_0052A06: や。
Z14_0052A07: 談曰。老僧四十餘りの比より。牡丹芍藥を植て樂め
Z14_0052A08: り。乃至老年の華は似霧中看等。辨曰。事持念佛者
Z14_0052A09: は佛願に酬て。生後忽ち具六通。地樹華池等。一所と
Z14_0052A10: して。其の實を得ざることなければ。此の譬喩は分も
Z14_0052A11: 合。却て具足三心。稱名念佛の修因なき。觀心持戒
Z14_0052A12: 等の。諸行往生の者は。霧中の看なるべし。非本願の
Z14_0052A13: 行なるが故に。況や今の談義の。しづのをだまき。く
Z14_0052A14: りかへし〱て思ふ樣な開解は。臆度情慮の分なれ
Z14_0052A15: ば。得生も許しがたし。又老漢四十餘りの比より牡丹
Z14_0052A16: 芍藥を植て樂まるゝとは。凡そ風華雪月に。心を寄す
Z14_0052A17: るは。悠々の凡情なり。但し老漢は。牡丹を見ても。無
Z14_0052B01: 常生滅の觀をなし。芍藥を詠めても。色香中道の觀を
Z14_0052B02: なす故に。悠々の凡情には非ずと利口せられんか。爾
Z14_0052B03: らはその無常生滅や。色香中道の觀は。必すしも牡丹
Z14_0052B04: 芍藥には限らず。野菊や。菜大根の華。名もなき窓前
Z14_0052B05: の草々も。皆これ無常なり。中道なり。何ぞ此等にて。
Z14_0052B06: 觀法をなさずして。別して牡丹芍藥の。色よき中に
Z14_0052B07: も。色よきを賞愛せらるゝや。其心の底をとくと吟味
Z14_0052B08: せられよ。これ愛情ならぬとは。全く云れまじ。先に
Z14_0052B09: 淨土坊主の身もちにても。しらるゝと謂れしが。此の
Z14_0052B10: 愛樂の心持にて。老漢の眞實の後世者にあらざるこ
Z14_0052B11: とをしりぬ。雜阿含經に蓮香の比丘を。池神のとがめ
Z14_0052B12: しごとく。持戒淸淨の比丘には許しがたき心底なり。
Z14_0052B13: 心戒上人は。蹲踞し玉ひ。明禪上人は。調味の食に。水
Z14_0052B14: を加はへて。執を厭ひ玉ふとなり。而るに老漢の。霧
Z14_0052B15: 中の看まても今に捨られぬ著心は。誠に哀なること
Z14_0052B16: なり。若し又唯心法界の華ならば。修觀の功深きにし
Z14_0052B17: たがつて。尙鮮潔なるべし。洞空滅後一紀も過て後。

ウィンドウを閉じる