浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z14_0052A01: | 宗家の正意にあらず。法苑義林章に。佛本願力。大威 |
Z14_0052A02: | 德力。唯識性相所レ不レ判矣。今は是本願力なり。得生 |
Z14_0052A03: | 者何夫各見不同あらんや。佛力加するときんば。能 |
Z14_0052A04: | 見の者の業力にはよらず。足指按地思レ之。穢土旣に |
Z14_0052A05: | 爾り。況や質を蓮臺に託して。得無生忍の後なるを |
Z14_0052A06: | や。 |
Z14_0052A07: | 談曰。老僧四十餘りの比より。牡丹芍藥を植て樂め |
Z14_0052A08: | り。乃至老年の華は似二霧中看一等。辨曰。事持念佛者 |
Z14_0052A09: | は佛願に酬て。生後忽ち具二六通一。地樹華池等。一所と |
Z14_0052A10: | して。其の實を得ざることなければ。此の譬喩は分も |
Z14_0052A11: | 不レ合。却て具足三心。稱名念佛の修因なき。觀心持戒 |
Z14_0052A12: | 等の。諸行往生の者は。霧中の看なるべし。非本願の |
Z14_0052A13: | 行なるが故に。況や今の談義の。しづのをだまき。く |
Z14_0052A14: | りかへし〱て思ふ樣な開解は。臆度情慮の分なれ |
Z14_0052A15: | ば。得生も許しがたし。又老漢四十餘りの比より牡丹 |
Z14_0052A16: | 芍藥を植て樂まるゝとは。凡そ風華雪月に。心を寄す |
Z14_0052A17: | るは。悠々の凡情なり。但し老漢は。牡丹を見ても。無 |
Z14_0052B01: | 常生滅の觀をなし。芍藥を詠めても。色香中道の觀を |
Z14_0052B02: | なす故に。悠々の凡情には非ずと利口せられんか。爾 |
Z14_0052B03: | らはその無常生滅や。色香中道の觀は。必すしも牡丹 |
Z14_0052B04: | 芍藥には限らず。野菊や。菜大根の華。名もなき窓前 |
Z14_0052B05: | の草々も。皆これ無常なり。中道なり。何ぞ此等にて。 |
Z14_0052B06: | 觀法をなさずして。別して牡丹芍藥の。色よき中に |
Z14_0052B07: | も。色よきを賞愛せらるゝや。其心の底をとくと吟味 |
Z14_0052B08: | せられよ。これ愛情ならぬとは。全く云れまじ。先に |
Z14_0052B09: | 淨土坊主の身もちにても。しらるゝと謂れしが。此の |
Z14_0052B10: | 愛樂の心持にて。老漢の眞實の後世者にあらざるこ |
Z14_0052B11: | とをしりぬ。雜阿含經に蓮香の比丘を。池神のとがめ |
Z14_0052B12: | しごとく。持戒淸淨の比丘には許しがたき心底なり。 |
Z14_0052B13: | 心戒上人は。蹲踞し玉ひ。明禪上人は。調味の食に。水 |
Z14_0052B14: | を加はへて。執を厭ひ玉ふとなり。而るに老漢の。霧 |
Z14_0052B15: | 中の看まても今に捨られぬ著心は。誠に哀なること |
Z14_0052B16: | なり。若し又唯心法界の華ならば。修觀の功深きにし |
Z14_0052B17: | たがつて。尙鮮潔なるべし。洞空滅後一紀も過て後。 |