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Z0450 閑亭後世物語 隆寛 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z09_0054A01: (まん)心を(ひるかへ)さば。かまへて我身を人に勝れたりと思
Z09_0054A02: ふ心を(うしなふ)べし。佛の平等の慈悲本願の不思議にて。貴
Z09_0054A03: も賤も行の(おほき)(すくなき)も。在家も出家も。()(かい)()(かい)も。男
Z09_0054A04: 子も女人も。智者も愚人も。發心の(ひさしき)(ちかき)も。只念佛
Z09_0054A05: に依て往生すと思ふべき也。
Z09_0054A06: 問。人の臨終正念にて。(さい)()の念佛して目出度く往生
Z09_0054A07: しつとみる程に。(や〻)(しばらく)()つて(いき)()で。(あさ)(ましき)(やう)にて。(くるひ)
Z09_0054A08: て死ぬる事の候は。いかなる事ぞや。答。去る事候。其
Z09_0054A09: は其人は正しく往生はとげ(をはん)ぬ。然るに其からに。(あしき)
Z09_0054A10: すだまの入りかはりてさる不思議を(あらはす)也。人の死ぬ
Z09_0054A11: る時は。其所に(よろづ)(あしき)物あつまりて。後世の(さまたげ)とする
Z09_0054A12: に。念佛申す者をば。佛の(らい)(かう)し給へば。(ちから)(なく)して。魂
Z09_0054A13: は淨土に參りぬ。せめて其からだに入てくるふ也。又
Z09_0054A14: 天魔などの往生をさへかねて。其からに入て(あく)(さう)
Z09_0054A15: 現じて。念佛申せども往生せぬよしを顯はして。人に
Z09_0054A16: 念佛を(うたがは)せんとする也。されば人の臨終にあはんに
Z09_0054A17: は。此樣を心得て兼て能々用意すべき也。まさしく往
Z09_0054B01: 生を(とけ)(をわり)ぬと見る共。後に一時念佛申し。はるかに
Z09_0054B02: (しづま)る迄念佛を留まらず申すべき也。念佛とく申し(と※)
Z09_0054B03: まり。(いそ)ぎて往生すと云ふ事をの〻しるまじき事也。
Z09_0054B04: 問。近來(ちかきころ)を聞くに。十歲以前の(おさなき)(もの)の中に。臨終めで度
Z09_0054B05: く念佛申て終て。異香音樂などの(ずい)(さう)()(とく)を現じて。
Z09_0054B06: 往生のよしをひた〻敷(の〻しる)事共候は。寔にさるべき道
Z09_0054B07: 理の候べきやらん。答。其は眞實の事也。隆寬律師の
Z09_0054B08: 物語に。二歲子の往生したる也。(ある)(うん)(がく)の子の二歲な
Z09_0054B09: るが死にたるを。(ふた)(をか)(れん)(だい)()に葬送するに帶刀と
Z09_0054B10: いふ者いだきて車より(をり)て。懷より取り出す時。以外
Z09_0054B11: に異香薰ず。人々こはいかにと(あやしむ)(ところ)に。乳母(めのと)の云く。御
Z09_0054B12: 所を出でさせ給ひつる時より。此かほりは有りつると
Z09_0054B13: て人に(かたり)。目出度(にほ)ひ有しと知らせけり。(よが)問て云く。
Z09_0054B14: 其は宿(しゆく)(しゆう)に依て往生し候かと申せしかば。先師隆寬
Z09_0054B15: 云。宿(しゆく)(ぜん)もさる事なれ共。(おほし)は當時の緣によるべき也。
Z09_0054B16: 殿中は偏に他事なく念佛申す所也。(しかる)(ゆえ)に死に候ひ
Z09_0054B17: ける時に集て。念佛申しきかせける故と。云々

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