浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z09_0055A01: | 問。若然ば病人たとひ苦に逼られて。みづから申すに |
Z09_0055A02: | あたはず共。傍の人の念佛に依て往生すべしや。答。 |
Z09_0055A03: | 其は必しも然るべしとも覺へず。傍の人の念佛に依 |
Z09_0055A04: | て。病人も聽聞して苦痛もやみ。信心發に依て自念佛 |
Z09_0055A05: | 申さば。往生すべき也。たとひ物いはぬ病にて。口には |
Z09_0055A06: | 自聲を出して申さずとも。心に信受して南無阿彌陀 |
Z09_0055A07: | 佛と念じて死しなば。往生すべきや。傍の念佛は。病 |
Z09_0055A08: | 者の信心を發さしめん料也。 |
Z09_0055A09: | 問。病人苦痛に逼られて。知識勸れ共信受せず。傍に念 |
Z09_0055A10: | 佛申すとも聞き入れず。苦痛てんだうして軈て死な |
Z09_0055A11: | んをば。如何すべき。答。其は力及ばず。さればこそ |
Z09_0055A12: | 兼てより。無常の道理をもしり。死なん事をも思ひ。娑 |
Z09_0055A13: | 婆世界の憂習を厭習。淨土の目出度き事をも願習。念 |
Z09_0055A14: | 佛をも心に懸習。臨終の來迎をも思ひ習ふべきまで |
Z09_0055A15: | こそあれ。されば安樂集に。習先より非ずば。懷念い |
Z09_0055A16: | か※わきまふべきと勸られたれば。兼て思ひ習ひぬ |
Z09_0055A17: | る人は。たとひ臨終にしづみ苦痛に責られけれ共。知 |
Z09_0055B01: | 識す〻むれば。去る事ありと思ひ出られ。念佛の聲を |
Z09_0055B02: | きけば。我も信心發て申されて念佛に住して來迎に |
Z09_0055B03: | も預る也。日來念佛も申さず。往生も願いはぬ人も。苦 |
Z09_0055B04: | 痛にせめられ候時。始て勸は。軍みて矢はくが如し。爭 |
Z09_0055B05: | たやすく發心すべき。されば善導も。各聞强健有力時。 |
Z09_0055B06: | 自策自勵求常住と勸め給ひて。各きけ年もよらず病 |
Z09_0055B07: | も來らず。身强く力の有る時に。自勵て常住を求めよ |
Z09_0055B08: | と云ふ心也。誠に身もつよく心も强き時申し置てし |
Z09_0055B09: | 念佛にて。年も寄病もせめん時には。身もよわり心も |
Z09_0055B10: | はれて有共。日來勵たる念佛に依て。臨終も分明に也 |
Z09_0055B11: | て必ず往生すべき也。能々此道理を思ひ入れて。稱名 |
Z09_0055B12: | 念佛し。命終迄退轉すべからず。穴賢々々。 |
Z09_0055B13: | 閑亭後世物語卷下終 |
Z09_0055B14: | 元祿五壬申夏板行 |