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Z0450 閑亭後世物語 隆寛 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z09_0053A01: ひ馴れ奉りて。生身の佛をみ奉る也と。云々明遍僧都
Z09_0053A02: 云。此本尊の外に。生身の佛御座(おはし)まさず。此()像(ざう)(もく)像(ざう)
Z09_0053A03: を。頓て生身の佛と思ふこそ本尊に(むかひ)奉る()()なれ。
Z09_0053A04: (しん)(ごん)敎にも。此本尊を(やが)て生身と思ひて(おこな)へばこそ
Z09_0053A05: 悉地も心(とく)(じやう)(じゆ)すれと。云々上人(のたまはく)。生身の佛此の本
Z09_0053A06: 尊に入り給へば。本尊の御(まなこ)に見へ奉るは。頓て生身
Z09_0053A07: の御眼にみへ奉ると思ふべし。本尊の御耳に申す事
Z09_0053A08: 聞れ奉るは。やがて生身の御耳にきかれ奉ると思ふ
Z09_0053A09: べし。かやうに思へば。本尊に向ひ奉る功德目出度事
Z09_0053A10: 也と。云々
Z09_0053A11: 問。念佛は如何なる心にて申すが。臨終も(あしく)往生はせ
Z09_0053A12: ぬぞや。答。(さき)に此()(をはりぬ)。上人は三心具足せぬ者也と。
Z09_0053A13: 云々(わたくし)に是を推するに。往生せぬ念佛に四種あるべし。
Z09_0053A14: 一には()(りき)念佛。二には()(みやう)念佛。三には惡義念佛。四
Z09_0053A15: には(まん)(しん)念佛。第一に自力の念佛と云へば。佛の本願
Z09_0053A16: 也共。我身(よく)我心よく。我(はげみ)よくてこそ往生はすれと
Z09_0053A17: 思ふは自力也。第二に()(みやう)の念佛と云ふは。一分も後
Z09_0053B01: 世の爲に思はず。只(こん)(じやう)(みやう)()名聞の爲にして申す
Z09_0053B02: は假名也。第三に惡儀の念佛と云ふは。念佛は一念に
Z09_0053B03: 往生す。多念申すは本願を(うたがふ)也。罪を恐るは本願を信
Z09_0053B04: ぜざる也と云ふは惡義也。第四に慢心の念佛と云ふ
Z09_0053B05: は。何事に付ても(よろづの)人を思ひ下して。我に過ぎたる(たふとき)
Z09_0053B06: 者はあらじと思ふは(まん)心也。念佛者の臨終の(あしき)と云
Z09_0053B07: ふは。此四種の中の其一也と知るべし。
Z09_0053B08: 問。是等の心をば何樣になをして申す念佛が。往生し
Z09_0053B09: 候べき。答。第一に自力の心を(ひるがへ)さば。我身もわろく
Z09_0053B10: 我心もわろく。我(はげみ)もよはくとも。佛の本願不思議な
Z09_0053B11: れば。必ず往生すべしと思ひて申さば他力の念佛也。
Z09_0053B12: 第二に假名の心を(ひるがへ)さば。眞實に往生を願ひて人め
Z09_0053B13: をかざらず。內心を僞らずして申す念佛は。假名を離
Z09_0053B14: たる也。第三に(あく)()(ひるがへ)さば。惡は十惡五逆までも(さわり)
Z09_0053B15: なしと知りて。(かまへ)て小罪をも(つくら)じと思ふべし。造ると
Z09_0053B16: も恐るべし。造れば念佛を申すべし。往生は一念に不
Z09_0053B17: 足なしと思ひて彌々多念を重ねんと思ふべし。第四

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