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Z0450 閑亭後世物語 隆寛 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z09_0049A01: けれ。たとひ本願有とも。我身も惡しく。我心もあしく
Z09_0049A02: 勤ゆるくては。(いかでか)佛も迎へ給ふべき。(ひとへ)に我力を勵ま
Z09_0049A03: して申す念佛は自力也。只佛の(しん)(じつ)の本願を憑みて。
Z09_0049A04: 我身のわろきに付ても。我心のわろきに付ても。我(ぎやう)
Z09_0049A05: のよはきに付ても。偏に佛の願力にて往生すべしと
Z09_0049A06: 思ふは。()(りき)の念佛なれば。必往生すべしと。云々
Z09_0049A07: 問。平生の念佛に依て。臨終正念に住して。最後の十念
Z09_0049A08: (となへ)て。佛の(らい)(かう)に預るべしと信じて。當時の念佛をば
Z09_0049A09: 臨終正念の(いのり)と思ふべしや。答。打ちまかせたる信
Z09_0049A10: 心のよきと申すは。皆さこそ候めれ。但當時の念佛に
Z09_0049A11: 祈れて。最後の念佛を申すと云ふ義こそ。少念佛の二
Z09_0049A12: 重なるに存ぜらる〻事のいかんぞやと聞へ候也。念
Z09_0049A13: 佛は(へい)(ぜい)の時申すも臨終の時申すも。利益の()(りき)
Z09_0049A14: じ事にてこそ候へ。全く差別も勝劣もなき事にて候物
Z09_0049A15: を三心()(そく)の念佛は。(せつ)(しゆ)(くわう)(みやう)(かふむり)て。三業悉く佛に
Z09_0049A16: 和合して。暫も(あひ)(はなれ)ずと見へたり。されば念々(ごと)に無
Z09_0049A17: 量のつみを滅して。無上の()(どく)を具して。(こゑ)()(ごと)に佛
Z09_0049A18: の御心に(とり)(をさめ)て。捨られざらんにすぎては。何樣の念
Z09_0049B01: 佛を申すべきぞ。されば上人の三心の御(しやう)(そく)には。平
Z09_0049B02: 生の念佛に依て佛は(らい)(こう)し給ふ。佛來り給へば臨終
Z09_0049B03: 正念に(ぢゆう)す。本より佛の來迎は行者の臨終正念の料
Z09_0049B04: 也。佛の來迎(けつ)(ぢやう)ならば。又我が臨終正念も決定とこ
Z09_0049B05: そ思ふべきに。臨終に我が正念に住して念佛申した
Z09_0049B06: らんおりに。佛は來迎し給ふとのみ思ふて。當時の念
Z09_0049B07: 佛の外に。ひとへに臨終正念の祈は。佛の本願も信
Z09_0049B08: ぜぬ者也。いつかは佛も。臨終に申す念佛をのみ迎へ
Z09_0049B09: ん。平生に申す念佛をば迎へじとは誓ひ給ひたる。臨
Z09_0049B10: 終の念佛にて往生すと云ふは。日來(ひごろ)は念佛も申さず
Z09_0049B11: 往生も願はぬ者の。命終らんとする時。善知識に(す〻め)
Z09_0049B12: れて。始て一念十念して。十惡五逆の者も。往生すとこ
Z09_0049B13: そ觀經にも(とかれ)たれ。た※(よく)()當時の念佛をぞ心に入
Z09_0049B14: て申すべきと。云々(りう)(くわん)(りつ)()の消息に云く。臨終の念佛
Z09_0049B15: にてこそ往生すれと云ふは。平生の念佛は詮もなか
Z09_0049B16: るべきにや。當時の信心の外に。臨終の正念を祈るべ
Z09_0049B17: からず。平生の念佛の外に。最後の念佛を期すべから

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