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Z0450 閑亭後世物語 隆寛 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z09_0045A01: 閑亭後世物語卷下
Z09_0045A02: 問。念佛に一念多念と申義の候なるは。いかなる事ぞ。
Z09_0045A03: 答。一念と申は。命つ※まれる時に是を聞て。一遍南
Z09_0045A04: 無阿彌陀佛と申て。二遍に及ばずして(をわる)を。一念往生
Z09_0045A05: と申す也。多念と申すは。命のびたる時是を聞て。一遍
Z09_0045A06: は十遍になり。百遍は千遍乃至(ないし)一日一年二年十年廿年
Z09_0045A07: (のぶ)るま〻に。念佛の數遍つもりて(をわる)を。多念往生と
Z09_0045A08: 申す也。(しかれ)(すなはち)一念往生と云ふは。臨終の時に(あへる)()也。
Z09_0045A09: 多念往生といふは。(へい)(ぜい)の時にあへる()也。
Z09_0045A10: 問。さては平生の多念の念佛は。一念の(しん)をとれりと
Z09_0045A11: 申す事候は。(ひが)事にて候か。答。ひが事もあり(だう)()
Z09_0045A12: あり。僻事と申すは。往生は一念にきはまりたりと云
Z09_0045A13: ふて。念佛多く申すは。一念の()(どく)をしらぬ(ゆえ)信ぜぬ
Z09_0045A14: 故とぞしるなり。(かの)一念に往生すと云ふは。二念に及
Z09_0045A15: ばずして(いのち)(をはる)故にてこそあれ。た※〲命(のび)(いよ〱)(おほく)
Z09_0045A16: 申べきを。(かへつ)て申す人をそしるはひが事也。道理と申
Z09_0045B01: は。念佛は一念にも往生をとぐるを。(しかる)べく命(のび)て彌
Z09_0045B02: 申しかさねて。多念の功をつめるよと思ひて。()(へん)
Z09_0045B03: 申すべき也。上人常の御(ことば)には。罪は五(ぎやく)もさはり(なく)
Z09_0045B04: と知とも。(かまへ)(せう)(ざい)をもつくらじと思ふべし。往生は
Z09_0045B05: 一念に(たり)ぬと存ずとも。多念を重ねんと思ふべし。(しん)
Z09_0045B06: をば一念に往生すと(とり)て。行をば多念にはげむべし
Z09_0045B07: と云々。隆寬律師云く。同く(じやう)()(しゆう)に入て。(せん)(しう)の行を
Z09_0045B08: 立て。本願を信じ名號を唱へながら。一念多念の二の
Z09_0045B09: 義うしろあはせなるべき樣。いかにも〱有るまじ
Z09_0045B10: き事ぞかし。一念を執する行者は。よく彌陀の本願を
Z09_0045B11: さとり。(よく)名號の()(のう)(しやう)したる人なり。(じつ)(ごと)(せつ)
Z09_0045B12: のごとく。一念の功力の(ざう)(じやう)にして必ず往生し。一念
Z09_0045B13: ()(やく)(きう)にして(さだめ)(せつ)(しゆ)せらる〻(ふか)(おもむき)入たる(むね)
Z09_0045B14: を。(しん)(じつ)に信知してんに(とり)ては。(きやう)(そう)の心も(ほね)にとを
Z09_0045B15: り。()(〻やう)の思も(きも)に銘じて。(かさね)ても〱(となへ)まほしく(かへす)
Z09_0045B16: ()も稱せんこそと覺ゆべき事なれ。多念して(あく)()
Z09_0045B17: く。常に唱へて退せじと存ずるをば。もろともに(ずい)()

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