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Z0450 閑亭後世物語 隆寛 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z09_0040A01: て件の修行者を高野一山の內を尋求らる〻に跡形
Z09_0040A02: もなし。然々の者と尋さするに。更に見たりと云人も
Z09_0040A03: なし。此時僧都仰られけるは。た※人にはあらず。佛の
Z09_0040A04: 化して我日來(ひごろ)數珠のはやくりする念佛を。不法の事
Z09_0040A05: に思ひつる(とが)をいましめの料也とて。(さん)()し給ひけ
Z09_0040A06: ると申つたへたり。
Z09_0040A07: 問。念佛の數遍早く〻りて數遍多きと。數珠を靜にく
Z09_0040A08: (たしか)に申て念佛のすくなからんと。何れがすぐれて候。
Z09_0040A09: 答。是は上人の御存生の時評定終へたり。少くともた
Z09_0040A10: しかなるは勝れたらんとて。六萬遍は三萬遍になり。
Z09_0040A11: 三萬遍は一萬遍になしたる程に。心のさはがしき事は
Z09_0040A12: (ぼん)()()(たい)のならひなれば。始には靜ならんと思ひ
Z09_0040A13: しかども。後には(そう)()にして。數珠は本の如くにはや
Z09_0040A14: くなりて數遍のだけはし※めたり。是れゆ〻しき僻事
Z09_0040A15: なるべしとて(みな)本のごとく(はやく)して多くなされしなり。
Z09_0040A16: 問。數遍早くして多からんと。念佛たしかに申て少か
Z09_0040A17: らんと。何か勝れ候なん。答。日夜に忘る時なく常に
Z09_0040B01: (さう)(ぞく)せん料なれば。早く數遍十萬遍を一日の所作と
Z09_0040B02: する程に。一萬遍なりとも餘事をまじゑず。一日に申
Z09_0040B03: はつる樣に(しづか)ならば。誠によかるべき也。上人も一萬
Z09_0040B04: 遍なりとも一日一夜に申はつる樣に。靜に申さば然
Z09_0040B05: るべしと仰せられける也。
Z09_0040B06: 問。念佛は高聲こそ勝れたれ。聲にも出ずして只數珠
Z09_0040B07: をくりて數を取は。謂なしと申候はいかに。答。長樂
Z09_0040B08: 寺の律師の云く。心にも南無阿彌陀佛と念て數をと
Z09_0040B09: れば。同じ稱名也。口に唱ふるも南無阿彌陀佛の名號。
Z09_0040B10: 身に禮するも南無阿彌陀佛と禮すれば。三業の起行
Z09_0040B11: は皆稱名也と。云々上人の給はく。念佛は最も稱名を
Z09_0040B12: 本願とすれば。地體は高聲なるべし。さればとて。機
Z09_0040B13: 嫌あしき時に申せば。聞く人此れをそしる故に。自他
Z09_0040B14: たがひに罪を受る事也。此樣を心得べし。但我耳に聞
Z09_0040B15: ゆる程を高聲のぶんに取る也。
Z09_0040B16: 問。今は本願の()()()をも疑はず。我惡をも疑はず。但
Z09_0040B17: (ぎやう)(はげまん)ぬ事の(なげか)(しく)候。人の上を聞くには。或は日に八

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