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Z0400 空花和歌集 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0357A01: 此歌。西方の願行をす〻むる也。第二の句にて切て
Z08_0357A02: みれば。てにをはよくきこゆる歟。五文字口稱に心
Z08_0357A03: 念を兼たり。○心は西にといへるは。心は三業の主
Z08_0357A04: にして。受生の本なるが故也。禪林の十因。云心
Z08_0357A05: 作業之主。受生之本也。心王若西ケハ。業亦從
Z08_0357A06: 云云。○うつせみとは。古今集顯注云。うつせみは。
Z08_0357A07: 蟬のぬけからを云ふ。うつとは虛と書くたり。むな
Z08_0357A08: しといふ義也云云。奧義抄云。うつせみは。蟬のもぬ
Z08_0357A09: けたるから也。身もなき物をばかくいふ也。うつせ
Z08_0357A10: 貝など云ふも。身もなき貝なり。萬葉には空蟬とか
Z08_0357A11: けり。八雲御抄云。うつせみからをいふべし。但むか
Z08_0357A12: しより。鳴くといへり。た▲蟬の摠名なり云云。○も
Z08_0357A13: ぬけとは。蛻の字也。此たとひも本文あることなり。
Z08_0357A14: 寂音禪師彌陀讚云。脫然蟬蛻出五泥濁云云。大智
Z08_0357A15: 律師彌陀經疏云。形留神逝有蟬蛻云云。○聲ぞ
Z08_0357A16: す〻しきといへるは。蟬の緣の語なり。す▲しき聲
Z08_0357A17: とよめる歌おほし。
Z08_0357A18: 龜山殿七百首 有光朝臣
Z08_0357A19: 衣ふくしける木かけになくせみの
Z08_0357A20: 聲もす〻しき庭の夕風
Z08_0357B01: 新古今 讚 岐
Z08_0357B02: なくせみの聲もす〻しき夕くれに
Z08_0357B03: 秋をかけたる森の下露
Z08_0357B04: 新續古今 前關白左大臣
Z08_0357B05: 雨はる〻外山の木々の夕風に
Z08_0357B06: す〻しく渡るせみの諸聲
Z08_0357B07: それ常に彼の佛を念じて。心を西方にうつせる行
Z08_0357B08: 者は。その身さながらもぬけたる殼のごとく。南無
Z08_0357B09: 阿彌陀佛に稱へ入て。我々所のけがれをわすれ。三
Z08_0357B10: 毒の熱惱をさましはてたる端的は。淸く凉しき音
Z08_0357B11: 聲なるべし。此時生佛感應し。事理圓融して。稱名の
Z08_0357B12: 聲すなはち實相の行なり。無生の行なり。如來の行
Z08_0357B13: なり。𣵀槃の行なり。かく凉しき妙音なれば。經中に
Z08_0357B14: これを無上深妙禪と名づく。古人念佛云。妙用
Z08_0357B15: 玆涉有覽無云云。袁中郞集云。六箇手中旋天轉
Z08_0357B16: 地云云。又古德の歌に
Z08_0357B17: となふれは佛も我もなかりけり
Z08_0357B18: 南無阿彌陀佛の聲はかりして
Z08_0357B19: 是も事理縱橫の旨をふかくおもへる歌な〓べし。
Z08_0357B20: 又此上人の歌。願行をす〻む。心を西にといへるは

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