浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
Z08_0354A01: | 修せられし時。天王寺の西門の西の岸に。新別處と |
Z08_0354A02: | て。四間四面に一宇の堂を建立し給ふ。その堂の西 |
Z08_0354A03: | の小壁に。上人自筆にて名號をあそばし。その傍に |
Z08_0354A04: | 此歌を書き給ふ。其堂破倒の時。天王寺の衆中の秋 |
Z08_0354A05: | 野といふ人。此名號を取て所持せらる。諸人拜見せ |
Z08_0354A06: | り云云。今天王寺西門の乾。茶磨山の傍に一心寺と |
Z08_0354A07: | て。淨土宗の精舍あり。これその舊跡なり。かの御自 |
Z08_0354A08: | 筆も今にあり。世に難波名號と稱するこれ也。 |
Z08_0354A09: | 頭夫木集奧書ニ云。此一部卅六帖。遠江國住人勝田 |
Z08_0354A10: | 前越前守長淸朝臣撰之云云。○攝津國と書きて。つ |
Z08_0354A11: | のくにとよむ也。紀伊と書きて。きとよむがごと |
Z08_0354A12: | し。攝の字をよまず。○無名抄云。名所を取るに故 |
Z08_0354A13: | 實あり。國々の歌枕數もしらずおほかれど。その |
Z08_0354A14: | 歌の姿に隨ひてよむべき所のある也。その所の |
Z08_0354A15: | 名に依て姿をかざるべし云云。○拾遺集。忠見。難 |
Z08_0354A16: | 波かたしけりあへるは君か代に。あしかるわさ |
Z08_0354A17: | をせねはなるへし。○拾玉集。慈鎭。あしかりし |
Z08_0354A18: | 身こそかはらね皆人は。なにはの事もむかしな |
Z08_0354A19: | らぬに。○萬葉集ニ云。安之我知流難波云云。拾穗 |
Z08_0354A20: | 抄ニ云。蘆ノ花散ル。古事記云。仁德天皇ノ時。堀テ二難波 |
Z08_0354B01: | 之堀江ヲ一而通レ海ニ云云。○此歌の腰に。津の國のと |
Z08_0354B02: | 有るは。半臂の句なるべき歟。○たらちねはか〻 |
Z08_0354B03: | れとてしもむは玉の。わか黑髮をなてすやあり |
Z08_0354B04: | けん。俊兼云。月といはんとて久かたとをき。山と |
Z08_0354B05: | いはんとて。足引といふは常の事也。されど。初の |
Z08_0354B06: | 五文字にてはさせる興なし。腰の句につ▲けて。 |
Z08_0354B07: | 詞のやすめに至りしかば。いみじく歌のしなも |
Z08_0354B08: | 出來て。姿をかざる也。古人これを半臂の句とぞ |
Z08_0354B09: | いひける云云。くはしく無名抄に見ゆ。○此難波 |
Z08_0354B10: | 名號は。十勝の專修寺にありとなん。 |
Z08_0354B11: | 此歌の終の句に付て。諸の善業をも。あしかりぬべ |
Z08_0354B12: | しといはん事。いか▲と難ずる者あり。此歌の心は。 |
Z08_0354B13: | その行體をいふにあらず。行者の心のみだるべき |
Z08_0354B14: | ゆへ也。一向專修の本意は。凡夫の心は。散亂なれば |
Z08_0354B15: | 餘事をまじへず。一行を專につとめしめんとてあ |
Z08_0354B16: | しかるべしといふ也。例せば。地想觀を行ずる時。餘 |
Z08_0354B17: | の雜境等を思出すをも。邪觀といへるがごとし。又 |
Z08_0354B18: | 佛界に望めて。九界をみな。惡趣といふ事もあれば。 |
Z08_0354B19: | 本願の念佛に望めて。餘行をあしかるといはんも |
Z08_0354B20: | ことはりならずや。 |