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Z0400 空花和歌集 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0354A01: 修せられし時。天王寺の西門の西の岸に。新別處と
Z08_0354A02: て。四間四面に一宇の堂を建立し給ふ。その堂の西
Z08_0354A03: の小壁に。上人自筆にて名號をあそばし。その傍に
Z08_0354A04: 此歌を書き給ふ。其堂破倒の時。天王寺の衆中の秋
Z08_0354A05: 野といふ人。此名號を取て所持せらる。諸人拜見せ
Z08_0354A06: り云云。今天王寺西門の乾。茶(ウス)山の傍に一心寺と
Z08_0354A07: て。淨土宗の精舍あり。これその舊跡なり。かの御自
Z08_0354A08: 筆も今にあり。世に難波名號と稱するこれ也。
Z08_0354A09: 夫木集奧書云。此一部卅六帖。遠江國住人勝田
Z08_0354A10: 前越前守長淸朝臣撰之云云。○攝津國と書きて。つ
Z08_0354A11: のくにとよむ也。紀伊と書きて。きとよむがごと
Z08_0354A12: し。攝の字をよまず。○無名抄云。名所を取るに故
Z08_0354A13: 實あり。國々の歌枕數もしらずおほかれど。その
Z08_0354A14: 歌の姿に隨ひてよむべき所のある也。その所の
Z08_0354A15: 名に依て姿をかざるべし云云。○拾遺集。忠見。難
Z08_0354A16: 波かたしけりあへるは君か代に。あしかるわさ
Z08_0354A17: をせねはなるへし。○拾玉集。慈鎭。あしかりし
Z08_0354A18: 身こそかはらね皆人は。なにはの事もむかしな
Z08_0354A19: らぬに。○萬葉集云。()()()()()(ナニ)(ハニ)云云。拾穗
Z08_0354A20: 云。蘆花散。古事記云。仁德天皇時。堀難波
Z08_0354B01: 之堀江(カヨハス)云云。○此歌の腰に。津の國のと
Z08_0354B02: 有るは。半臂の句なるべき歟。○たらちねはか〻
Z08_0354B03: れとてしもむは玉の。わか黑髮をなてすやあり
Z08_0354B04: けん。俊兼云。月といはんとて久かたとをき。山と
Z08_0354B05: いはんとて。足引といふは常の事也。されど。初の
Z08_0354B06: 五文字にてはさせる興なし。腰の句につ▲けて。
Z08_0354B07: 詞のやすめに至りしかば。いみじく歌のしなも
Z08_0354B08: 出來て。姿をかざる也。古人これを半臂の句とぞ
Z08_0354B09: いひける云云。くはしく無名抄に見ゆ。○此難波
Z08_0354B10: 名號は。十勝の專修寺にありとなん。
Z08_0354B11: 此歌の終の句に付て。諸の善業をも。あしかりぬべ
Z08_0354B12: しといはん事。いか▲と難ずる者あり。此歌の心は。
Z08_0354B13: その行體をいふにあらず。行者の心のみだるべき
Z08_0354B14: ゆへ也。一向專修の本意は。凡夫の心は。散亂なれば
Z08_0354B15: 餘事をまじへず。一行を專につとめしめんとてあ
Z08_0354B16: しかるべしといふ也。例せば。地想觀を行ずる時。餘
Z08_0354B17: の雜境等を思出すをも。邪觀といへるがごとし。又
Z08_0354B18: 佛界に望めて。九界をみな。惡趣といふ事もあれば。
Z08_0354B19: 本願の念佛に望めて。餘行をあしかるといはんも
Z08_0354B20: ことはりならずや。

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