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Z0390 父子相迎諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0271A01: りこのかた生死にた▲よひ。駒となりては。森の下草
Z08_0271A02: をすさめ。牛となりては。しづがあら田をかへし。峯
Z08_0271A03: にをきふすさを鹿となりては。妻をこひ野原にあさ
Z08_0271A04: る。きぎすとなりては。鷹をおそれし時も侍りき。地
Z08_0271A05: 獄。餓鬼。修羅。人。天ともなりて。それ〱の心をお
Z08_0271A06: こしぬ。業にまかせて。六の道の間をめぐりて。うきし
Z08_0271A07: づむ事さらにさだまらず。あともさだめずとは。足を
Z08_0271A08: とめぬ心也。一道にかぎらぬをいふ。歌にも。たつね
Z08_0271A09: よと敎ゆる宿をよそに見て。六の道には足もやすめ
Z08_0271A10: すと有り。は〻木に。その物とあともさだまらぬはと
Z08_0271A11: あり。●(二三六)是は譬也。下は法也。●(二三七)一生
Z08_0271A12: の間也。●(二三八)たびねのとこは。一夜のとまり也。
Z08_0271A13: 此身もわづか命ある內。たましゐにやどかすばかり
Z08_0271A14: 也。一夜の旅の宿は。わが家にあらざれば。おしむ心
Z08_0271A15: もなきぞかし。しからばなどか。此身を愛せんや。わ
Z08_0271A16: が身とおもふはまよひ也。此心を仁王經にも。形に常
Z08_0271A17: の主なく。神に常の家なしと〻かれたり。●(二三九)
Z08_0271A18: 是より下は。家なきところを慥にしめす也。今は身の
Z08_0271A19: 有るかぎりを一生涯といふ也。莊子。吾涯。
Z08_0271A20: 口義。涯際也。人之生也。各有涯際。●(二四〇)是
Z08_0271B01: は命のつくる事也。先の世の報にて得たる命なれば。
Z08_0271B02: ながきみじかき不同あるなり。資持記。命之延
Z08_0271B03: 。宿因ナリ。故報命。●(二四一)こ〻ろ
Z08_0271B04: とは。第八識心王の事也。六識は分散して。心王は冥
Z08_0271B05: 途にゆくなり。●(二四二)此字をくらきみちとよむ
Z08_0271B06: 也。冥は幽冥の義。顯明に對する詞也。あきらかなる
Z08_0271B07: 此生に對して。後生の事をくらき途といふ也。又は三
Z08_0271B08: 途におもむく間の。くらやみなるをもいふ。●(二四二)
Z08_0271B09: 下の句に。露と有に對して風といふ也。冥途へいたる
Z08_0271B10: 人。業の風にふかれて。ゆくゑもしらず。はしりまよふ
Z08_0271B11: 也。さすらふとは。𨂲の字なり。十因。神
Z08_0271B12: 𨂲中有之旅。字書云。𨂲散走ナリ。又徐
Z08_0271B13: 貌。又日本紀に。流離の字をさすらうと訓ず。新千載。
Z08_0271B14: 澄覺法親王。六の道四の姿にさすらひて。はしめも
Z08_0271B15: はてもしらぬかなしさ。○又風は形なくしてめぐる
Z08_0271B16: ものなれば。心のまよひめぐるによせていふ也。露は
Z08_0271B17: 形ありてきゆる物なれば。身のくちはつるによそへ
Z08_0271B18: ていふなるべし。●(二四四)此身は此世にのこる也。
Z08_0271B19: 南山律師云。一生形骸。委溝壑。累世神靈。繫
Z08_0271B20: 於業道。●(二四五)人すまぬ野原の事也。爾雅

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