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Z0390 父子相迎諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0270A01: 名。わが衣物。わが田。わが家。わがしつる事。わがい
Z08_0270A02: ひし事。われよく念佛し。われよく戒をたもつ。われよ
Z08_0270A03: く物をしり。われに思案ふかし。われはなにがしの子
Z08_0270A04: なり。たれの末孫なり。われに藝能あり。わがかたち。
Z08_0270A05: 人にすぐれたりなど。おもふ心より。身をたかぶり。人
Z08_0270A06: をかろしめ。名をおしみ。欲もふかく。さま〲の煩
Z08_0270A07: 惱おこりて。罪をつくり。生死にと▲まるなり。そも
Z08_0270A08: そも此身は。地水火風のあつまりてなれるもの也。か
Z08_0270A09: たきところは土なり。うるほひあるは水なり。あた〻
Z08_0270A10: かなるは火なり。うごくは風なり。此中に我といふべ
Z08_0270A11: きものなし。地水火風をわれといは▲。我といふ物四
Z08_0270A12: つ有や。さればこそ。氣たえぬれば心もうせ。身も本に
Z08_0270A13: かへりて。やけばつめたき灰となり。うづめば。こま
Z08_0270A14: かなる土となりて。あとかたもなし。わが身だになき
Z08_0270A15: ものなれば。なにをかわがものといはんや。無住和尙
Z08_0270A16: の歌に。よしもなく地水火風をかりあつめ。我とおも
Z08_0270A17: ふそくるしかりける。又この妄心もわれにはあらず。
Z08_0270A18: 此外に眞我といふものあり。下卷にてしるべし。●
Z08_0270A19: (二二九)一期のあいだ。●(二三〇)五蘊の假なるもの
Z08_0270A20: を。なづけて我とすといひて。此色身の上に。受想行識
Z08_0270B01: の四つの心のよりあひたるを。かりに我といふ名を
Z08_0270B02: 付たる也。●(二三三)頌疏。唯有五蘊ノミ。更ノミ
Z08_0270B03: 。於蘊上。假M(シテ)我ト。釋要鈔。於五蘊
Z08_0270B04: 。假。夫木抄に。爲家。いつまてか〻た
Z08_0270B05: ちにやとるたましゐの。はなれぬほとをありとた
Z08_0270B06: のまん。玉葉集。永福門院。かりそめに心の宿となれ
Z08_0270B07: る身を。あるものかほになにおもひけん。●(二二三)
Z08_0270B08: そのま〻いつ迄もある我にはあらずとなり。七賢
Z08_0270B09: 女經に。譬を引て說き給へり。たとへば。雀を瓶の中に
Z08_0270B10: 入て。(ウスキヌ)をもて。その口をおほひたるに。その口な
Z08_0270B11: (ウスキヌ)やぶる〻時は。その鳥やがてとびさるが如し。
Z08_0270B12: 此身は瓶のごとく。心は雀に似たり。命は口をはれる
Z08_0270B13: (ウスギヌ)にたとふ。命の(ウスギヌ)のやぶれざるうちは。此心この
Z08_0270B14: 身にやどり。命の(ウスギヌ)やぶるれば。心の雀は飛び出て。六
Z08_0270B15: 道の內。いづれの身になりともうつりかはる也。●
Z08_0270B16: (二三三)此たとへは。何方にも有へし。しばらく南山
Z08_0270B17: 。喩一人行千萬里。經ルニ屋宿。屋𪜈
Z08_0270B18: 。人一人ナルカ云云。●(二三四)とまりは。旅の宿
Z08_0270B19: たり。みちゆき人は。旅人なり。是は譬なり。下は法な
Z08_0270B20: り。●(二三五)生死に間斷なきをつねといふ。無始よ

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