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Z0390 父子相迎諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0268A01: ひは千里の雲にはせて。山の鹿(カセキ)をとりて年を〻くり。
Z08_0268A02: あるひは萬里の浪にうかびて。海の(イロクブ)をとりて日を
Z08_0268A03: かさね。あるひは嚴寒に氷をしのぎて。世露をわたり。
Z08_0268A04: あるひは炎天に汗をのごひて。利養をもとめ。あるひ
Z08_0268A05: は妻子眷屬にまとはれて。恩愛のきづなたちがたし。
Z08_0268A06: あるひは讎敵怨類にあひて。瞋恚のほむら。やむこと
Z08_0268A07: なし。かくのごとくして。きのふもいたづらにくらし。
Z08_0268A08: けふもむなしくあけぬ。いまいくたびかくらし。いく
Z08_0268A09: たびかあかさんとする云云。新拾遺。津守國助。何をし
Z08_0268A10: てくらすともなき月日かな。つもるはかりを身にか
Z08_0268A11: えへつ〻。●(二一七)玉葉集院御製おしむへくかなし
Z08_0268A12: むへきは世の中に。過て又こぬ月日なりけり。新古
Z08_0268A13: 今。隆季。あたらしき年やわか身にとめくらん。ひま
Z08_0268A14: ゆく駒に道をまかせて。●(二一八)きのふまでいたづ
Z08_0268A15: らにすぐしぬるは。くやしけれども。ちからなし。け
Z08_0268A16: ふよりすゑの月日をば。わがものにせよとなり。●
Z08_0268A17: (二一九)いま〻でうつら〱とくらしければ。わが一
Z08_0268A18: 生の月日ものこりすくなになれり。せめてわづかに
Z08_0268A19: のこる月日なりとも。いたづらにくらさずして。後世
Z08_0268A20: のためにせよとなり。和泉式部が。としのくれに。身の
Z08_0268B01: おひぬることを。なげきてよめる歌。かそふれはとし
Z08_0268B02: の〻こりもなかりけり。おひぬるはかりかなしきは
Z08_0268B03: なし。●(二二〇)(ヒマ)を偸て後世のいとなみをなさんと
Z08_0268B04: 心にかくべし。●(二二一)今まではみな夢の世のいと
Z08_0268B05: なみに日をついやしぬ。けふよりは。後世の事をする
Z08_0268B06: いとまにせよと也。今つら〱おもふに。身は草の葉
Z08_0268B07: の露のごとし。朝の露いまだきえざるさきに。いそぎ
Z08_0268B08: て。後のいとなみをなせ。命は風のまへの燈に〻たり。
Z08_0268B09: 曉のともしびの。わづかにのこるあいだに。心をはげ
Z08_0268B10: まして念佛すべし。△此下に引給ふは善導大師の御
Z08_0268B11: 釋なり。法事讚の下卷に有。これ無常臨終の事をいひ
Z08_0268B12: て。はやく此世の事をすて〻。西方をねがへとの御す
Z08_0268B13: すめなり。河海にも此釋を引。●(二二二)忽爾はたち
Z08_0268B14: まちなり。おもひがけもなきに死ぬる事なり。無常苦
Z08_0268B15: とは。死苦なり。是は身のくるしみ。下の句は。心のう
Z08_0268B16: れへなり。來逼とは。死苦きたりて暫時にせまる事な
Z08_0268B17: り。●(二二三)精神とは。その時の心の內なり。錯亂と
Z08_0268B18: は。あやまちみだる〻なり。何となく此世にのみ執心
Z08_0268B19: のこりて。往生をねがふ心はおこりがたし。平生は死
Z08_0268B20: をよそにおもひしに。此時はじめておもひしるを。始

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