浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z08_0268A01: | ひは千里の雲にはせて。山の鹿をとりて年を〻くり。 |
Z08_0268A02: | あるひは萬里の浪にうかびて。海の鱗をとりて日を |
Z08_0268A03: | かさね。あるひは嚴寒に氷をしのぎて。世露をわたり。 |
Z08_0268A04: | あるひは炎天に汗をのごひて。利養をもとめ。あるひ |
Z08_0268A05: | は妻子眷屬にまとはれて。恩愛のきづなたちがたし。 |
Z08_0268A06: | あるひは讎敵怨類にあひて。瞋恚のほむら。やむこと |
Z08_0268A07: | なし。かくのごとくして。きのふもいたづらにくらし。 |
Z08_0268A08: | けふもむなしくあけぬ。いまいくたびかくらし。いく |
Z08_0268A09: | たびかあかさんとする云云。新拾遺。津守國助。何をし |
Z08_0268A10: | てくらすともなき月日かな。つもるはかりを身にか |
Z08_0268A11: | えへつ〻。●(二一七)玉葉集院御製おしむへくかなし |
Z08_0268A12: | むへきは世の中に。過て又こぬ月日なりけり。新古 |
Z08_0268A13: | 今。隆季。あたらしき年やわか身にとめくらん。ひま |
Z08_0268A14: | ゆく駒に道をまかせて。●(二一八)きのふまでいたづ |
Z08_0268A15: | らにすぐしぬるは。くやしけれども。ちからなし。け |
Z08_0268A16: | ふよりすゑの月日をば。わがものにせよとなり。● |
Z08_0268A17: | (二一九)いま〻でうつら〱とくらしければ。わが一 |
Z08_0268A18: | 生の月日ものこりすくなになれり。せめてわづかに |
Z08_0268A19: | のこる月日なりとも。いたづらにくらさずして。後世 |
Z08_0268A20: | のためにせよとなり。和泉式部が。としのくれに。身の |
Z08_0268B01: | おひぬることを。なげきてよめる歌。かそふれはとし |
Z08_0268B02: | の〻こりもなかりけり。おひぬるはかりかなしきは |
Z08_0268B03: | なし。●(二二〇)閑を偸て後世のいとなみをなさんと |
Z08_0268B04: | 心にかくべし。●(二二一)今まではみな夢の世のいと |
Z08_0268B05: | なみに日をついやしぬ。けふよりは。後世の事をする |
Z08_0268B06: | いとまにせよと也。今つら〱おもふに。身は草の葉 |
Z08_0268B07: | の露のごとし。朝の露いまだきえざるさきに。いそぎ |
Z08_0268B08: | て。後のいとなみをなせ。命は風のまへの燈に〻たり。 |
Z08_0268B09: | 曉のともしびの。わづかにのこるあいだに。心をはげ |
Z08_0268B10: | まして念佛すべし。△此下に引給ふは善導大師の御 |
Z08_0268B11: | 釋なり。法事讚の下卷に有。これ無常臨終の事をいひ |
Z08_0268B12: | て。はやく此世の事をすて〻。西方をねがへとの御す |
Z08_0268B13: | すめなり。河海にも此釋を引。●(二二二)忽爾はたち |
Z08_0268B14: | まちなり。おもひがけもなきに死ぬる事なり。無常苦 |
Z08_0268B15: | とは。死苦なり。是は身のくるしみ。下の句は。心のう |
Z08_0268B16: | れへなり。來逼とは。死苦きたりて暫時にせまる事な |
Z08_0268B17: | り。●(二二三)精神とは。その時の心の內なり。錯亂と |
Z08_0268B18: | は。あやまちみだる〻なり。何となく此世にのみ執心 |
Z08_0268B19: | のこりて。往生をねがふ心はおこりがたし。平生は死 |
Z08_0268B20: | をよそにおもひしに。此時はじめておもひしるを。始 |