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Z0390 父子相迎諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0267A01: がごとし。口おしきかたわものなり。予がごとき者は。
Z08_0267A02: 道智ともになければ。さながら畜類にちかし。●(二〇
Z08_0267A03: 七)右の智道のことはりを。よくおもひわかちて。●
Z08_0267A04: (二〇八)たとひ一世に智者のほまれを得て。人の恭敬
Z08_0267A05: にあたるとも。道心なき人は。臨終に後悔すべし。かの
Z08_0267A06: 鄴洛禪師の例なきにあらず。月淸集に。月日のみなす
Z08_0267A07: ことなくてあけくれは。くやしかるへき身のゆくえ
Z08_0267A08: かな。遺敎經。無M(シテ)スヿ。後ルコト
Z08_0267A09: 莊嚴論。臨一レ呑。方ンコトヲ
Z08_0267A10: ●(二〇九)くやしきは臨終のこと也。此はからひは平
Z08_0267A11: 生の事也。策をめぐらすべし。●(二一〇)是より下へか
Z08_0267A12: かりてみるべし。無常の章の摠結なり。●(二一一)一期
Z08_0267A13: の年月をかぞへて見るべし。きはめてすくなきこと
Z08_0267A14: なり。たとひ八十まで生くる人も。わづかに二萬八千
Z08_0267A15: 八百餘日にして。三萬日迄は生きぬ身なり。よし百歲
Z08_0267A16: の命にもせよ。よくかぞへてみれば。わづかの間なり。
Z08_0267A17: 十四五までは物のわきまへもなし。八十になれば。老
Z08_0267A18: にほれて世にあるかひなし。その外たしかなる月日
Z08_0267A19: は。四十年ほど有。その四十年も。夜はねいりて。死人
Z08_0267A20: のごとくなれば。又半分をすて〻。のこるところは廿
Z08_0267B01: 年ばかりの事也。その廿年の中に。わが病にくるしみ。
Z08_0267B02: 人の禍にか〻り。よろこびごとに日をついやし。惡事
Z08_0267B03: に夜をあかし。一月の內に。口を開てうちわらふ日は
Z08_0267B04: 四五日にはすぎずといへり。此事くはしく增一阿含
Z08_0267B05: 經。五王經などに有。古人。人壽百歲七十稀ナリ
Z08_0267B06: 一分衰老一分癡。中間二十餘年事。幾多歡樂
Z08_0267B07: 。明惠上人此心を。いときなくおひてよはら
Z08_0267B08: ぬさかりには。まきらはしくてつゐにくらしつ。●(二
Z08_0267B09: 一二)何のおもしろき事もなき世なり。●(二一三)たか
Z08_0267B10: きもいやしきも。心に物のかなはぬ世なり。●(二一四)
Z08_0267B11: か〻づらふとは。か〻わる事也。幻の卷にも此詞有。世
Z08_0267B12: にか〻はりゐてなり。●(二一五)そこらはおほき事也。
Z08_0267B13: 若干の字を。日本紀に。そこらと訓す。家隆の歌に。あ
Z08_0267B14: ら玉のとしのいくとせけふくれて。そこらの人の身
Z08_0267B15: につもるらん。●(二一六)後の世のために。さりともと
Z08_0267B16: おもふ支度もせずして。むなしく此世のいとなみに。
Z08_0267B17: 日をついやしたるは。みないたづらになしたる也。法
Z08_0267B18: 然上人云。あるひは金谷の花をもてあそびて。遲々た
Z08_0267B19: る春の日をむなしく〻らし。あるひは南樓に月をあ
Z08_0267B20: ざけりて。漫々たる秋の夜をいたづらにあかす。ある

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