ウィンドウを閉じる

Z0390 父子相迎諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0259A01: ゆる間もなし。爲家の集に。無常の歌。はかなさはふな
Z08_0259A02: をか山のゆふまくれ。しはしもた〻ぬけふりにもし
Z08_0259A03: れ。新勅撰。俊惠。とりへ山こよひもけふりたつめり
Z08_0259A04: と。いひてなかめし人もいづらは。●(一二六)あさご
Z08_0259A05: とに也。なは付字也。つねにも朝露といふ也。(一二七)
Z08_0259A06: 露は命の事也。涙の事にあらず。たもとをうるほすと
Z08_0259A07: いふことは。なみだのこと也。前におもひをいたまし
Z08_0259A08: むる煙といへども。思の煙にあらず。●(一二八)人の
Z08_0259A09: 命のもろき事を。うへ木の露にたとへたり。すゑ葉に
Z08_0259A10: てみゆるとは。わかき人の死ぬる事也。新古今。式子
Z08_0259A11: 內親王。くる〻間も待へき世かはあたし野の。末葉の
Z08_0259A12: 露の嵐たつなり。是は僧正遍昭の歌に有。末の露もと
Z08_0259A13: のしつくや世の中の。をくれさきたつためしなるら
Z08_0259A14: ん。東野洲云。末の露とは。梢の心をよめり。もとの雫
Z08_0259A15: とは。木のもとのしづく也。すこし遲速はあれども。い
Z08_0259A16: づれもきゆる事を。人の命にたとへたり。○是は老少
Z08_0259A17: 不定の心なり。●(一二九)是は生者必滅の心なり。老
Z08_0259A18: て死ぬるを。もとの雫といふなり。新後拾遺。源仲綱。
Z08_0259A19: 淺茅原すゑ葉にすかる露の身は。もとの雫をよそに
Z08_0259A20: やはみる。●一三〇)此次第をよく見るべし。上に老ひ
Z08_0259B01: やすく死やすき事より。自他の無常など段々いひ來
Z08_0259B02: て。死後の事にうつる也。言葉のつ▲き。まことにたく
Z08_0259B03: みなり。上に葬の事あるをうけ來て。そのこといひて。
Z08_0259B04: 下へつ▲けて。死後のはかなき事を。あはれに書き給
Z08_0259B05: へり。又此段の對句。殊におもしろし。心を付て見るべ
Z08_0259B06: し。○爰の詞は。樂天の句を用ひたまへり。文集第十對
Z08_0259B07: 。賢愚共零落。貴賤同埋沒。東岱前後魂。
Z08_0259B08: 北邙新舊骨。●(一三一)もろこしにて死人を〻くる山
Z08_0259B09: の名なり。東なるを東岱といふ。京の東の鳥邊山ある
Z08_0259B10: がごどし。西要抄にありし泰山も此山の事なり。亦は
Z08_0259B11: 岱宗といふ。東にあるゆへ東の字を付ていふなり。五
Z08_0259B12: 嶽の中の東なるゆへ東嶽ともいふ。爾雅に河東岱と
Z08_0259B13: 有。くはしくは西要抄に註せり。援神契。太山
Z08_0259B14: 孫也。主ヿヲ人魂。劉公幹。常
Z08_0259B15: 岱宗復見故人。●(一三二)さきに葬。のちに
Z08_0259B16: をくられし人の魂なり。弘法大師。體
Z08_0259B17: 塵。魂何處ルトカ。●(一三三)死骸の事。●(一三四)
Z08_0259B18: いづくへゆきしぞ。多は冥途にまよふべし。●(一三五)
Z08_0259B19: たましゐのゆくゑのしれぬことをいはんとて。かく
Z08_0259B20: かきたまへり。是は故事あり。文選第十九に載せたり。

ウィンドウを閉じる