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Z0390 父子相迎諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0256A01: あり。住所をかへし時。わが妻をもとの家にわすれて
Z08_0256A02: おきぬ。それをこそ。天下の物わらひにはせしに。我身
Z08_0256A03: の死ぬる事をわする〻は。をろかなりともいはんか
Z08_0256A04: たなし。●(八四)兼好云。老きたりて。はじめて道を行
Z08_0256A05: ぜんとまつことなかれ。古づか。おほくはこれ少年の
Z08_0256A06: 人也。はからざるに病をうけて。忽に此世をさらんと
Z08_0256A07: する時にこそ。はじめてすぎぬるかたの。あやまれる
Z08_0256A08: 事はしらるなれ。その時くゆともかひあらんや。●
Z08_0256A09: (八五)寒山も。古墳多是少年人といひ。樂天も。少
Z08_0256A10: ヨリ者半爲といへり。げに此寺の墓をみるにも。
Z08_0256A11: 童男童女のそとばのみぞをほき。いはんや。二十に
Z08_0256A12: あまり。三十にたらずして死ぬる人おほかり。●(八六)
Z08_0256A13: 前にをほくはといふをうけて。そのといへり。新古今。
Z08_0256A14: 大僧正行尊。さためなきむかしかたりをかそうれは。
Z08_0256A15: 我身も數に入ぬへきかな。われらは數ならぬ身なれ
Z08_0256A16: ば。餘の事にはもらさるれども。死ぬる數にはもる〻
Z08_0256A17: 事なし。●(八七)又といふ詞なり。●(八八)はなは
Z08_0256A18: だの心なり。●(八九)つれ〲に云。わかきにもよ
Z08_0256A19: らず。つよきにもよらず。おもひがけぬは死期なり。け
Z08_0256A20: ふまでのがれきにけるは。ありがたき不思議なり。●
Z08_0256B01: (九〇)文殊の化身なり。天台山の寒巖といふ處に有
Z08_0256B02: しゆへ。寒山子といふ。まことには。氏も名もなし。古
Z08_0256B03: 鄕もしれず。つねにやぶれたる布の衣を著て。樺皮の
Z08_0256B04: 冠をいただき。大なる木屐をはき。國淸寺に來り。拾得
Z08_0256B05: 菜滓の殘れる物を。竹筒に入てあたふれば。すなはち
Z08_0256B06: 負てさる。ある時は廊下にやすらひ。高く吟じてひと
Z08_0256B07: りうそぶく。寺僧。杖を以て逐へば。手を打てわらふ。語
Z08_0256B08: に味あり。後に天台山の巖穴に入るに。その穴みづか
Z08_0256B09: ら閉ぢてふた〻びいでず。竹木石壁に詩を書き置た
Z08_0256B10: りしを。世の人。あがめ慕ひてうつしあつめ。寒山詩と
Z08_0256B11: なづくるもの也。●(九一)人の無常の事也。爰には五言
Z08_0256B12: 八句の中の。一二五六の句を略して。三四七八の四句
Z08_0256B13: を引き給へり。その詩。一寒山。淹留スルコト
Z08_0256B14: 三十年。昨來親友。太半入黃泉。漸スルコト
Z08_0256B15: 殘燭。長タリ逝川。今朝對シテ孤影。不覺涙雙
Z08_0256B16: 。●(九二)きのふ迄たづね來りし人。●(九三)太半
Z08_0256B17: とは。半分過の事也。漢書。分之一
Z08_0256B18: 。一小半。黃泉とは。左傳。天
Z08_0256B19: ナリ。泉地中。故黃泉。●(九四)ひとりわが
Z08_0256B20: 身の影を見る也。●(九五)自他の無常を觀じて也。●

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