浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J20_0552A01: | 以上弘安十年三祖入滅より。聖冏出世に至る一百 |
J20_0552A02: | 餘年間は。本宗の最衰微の時代にして。元亨釋書に |
J20_0552A03: | 寓宗と輕んじ附庸宗と蔑みたるも。實際之を反破す |
J20_0552A04: | るを得ざる狀態にありしが。聖冏の出世により漸く |
J20_0552A05: | 此屈辱より免るる端を開かれたり。 |
J20_0552A06: | |
J20_0552A07: | 第三章 冏酉兩師の宣揚 |
J20_0552A08: | |
J20_0552A09: | 一 冏師の時代と其事業 |
J20_0552A10: | 本宗宗義の綱格は。宗祖二祖三祖の三代により略 |
J20_0552A11: | 確定せられたり。然れども三代は所謂隨自顯宗門の |
J20_0552A12: | 方面を主とせられたるものにして。自宗の義を顯彰 |
J20_0552A13: | するには遺憾無かりしとするも。所謂隨他扶宗門の |
J20_0552A14: | 方面には未だ著手せられず。諸宗に對抗して自義を |
J20_0552A15: | 主張し。又彼等の難鋒に對して自家を辯護するに於 |
J20_0552A16: | ては。甚疎漏たるを免れざりき。二祖三祖の人格にし |
J20_0552A17: | て比較的當世の學者の識認する所とならず。其法資 |
J20_0552B18: | 法孫亦華嚴天台眞言等の顯密實大乘の諸敎と抗諍す |
J20_0552B19: | る能はず。特に當時京鎌倉を風靡したる禪家の威勢 |
J20_0552B20: | に應酬するに於ては極めて不用意の狀態に在り。か |
J20_0552B21: | の虎關禪師師鍊が。其著元亨釋書に。倶舍成實と共に |
J20_0552B22: | 本宗を寓宗となし國の附庸に譬へたるが如き。遺憾 |
J20_0552B23: | ながら當時本宗實際の狀態なりしなり。聖冏此狀を |
J20_0552B24: | 見て憤慨に堪へず。蓮勝定慧二師に謁して宗要を聽 |
J20_0552B25: | き。列祖相傳の祕訣を禀承し。隨自顯宗門に遺漏なき |
J20_0552B26: | に及び。各宗の碩學を訪問して權實漸頓の奧義を窮 |
J20_0552B27: | めしのみならず。更に神道國學をも學び其の幽旨を |
J20_0552B28: | 領得し。隨他扶宗門の準備に注意を怠らざりき。故 |
J20_0552B29: | に學成り業遂げて宗法興隆の大任に膺るや。講演に |
J20_0552B30: | 著述に。固より隨自顯宗を遺れざるも。表面は隨他 |
J20_0552B31: | 扶宗を主として猛進せり。其論陣の雄壯なる其詞鋒 |
J20_0552B32: | の鋭利なる。諸宗の學者をして趦趄逡巡せしめた |
J20_0552B33: | り。其論調奔逸の結果。動もすれば三代の綱格を離 |
J20_0552B34: | 脱せりとの譏あるも。境遇時勢に應適する爲には強 |