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J3060 浄土宗史 本会 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J20_0482A01: 制誡文を製して門弟一同に示して署名せしめ。別に
J20_0482A02: 起請文一通を添へて比叡山座主に呈せらる。尚月輪
J20_0482A03: 禪閤は長文一通を座主に寄せ。宗祖に罪なく念佛の
J20_0482A04: 禁ずべからざることを辨ぜらる。此により三塔の大
J20_0482A05: 衆は僅に鎭靜に歸したり。南都の訴訟も次で熄み。
J20_0482A06: 暫く少康を得たるも。建永二年二月に至り一大災厄
J20_0482A07: は降下せり。
J20_0482A08: 建永二年(十月廿五日承元と改元)二月九日。門弟
J20_0482A09: 住蓮房安樂房の兩人は死刑に處せられ。宗祖は土佐
J20_0482A10: 國幡に配流の宣下ありたり。是又南北の訴訟が遠因
J20_0482A11: たりしこと明なるも。門弟の放逸無慚の行動が此災
J20_0482A12: 厄を促したることも拒むべからず。宗祖の念佛が善
J20_0482A13: 導の六時禮讚の優雅なる歌調により流行を助けられ
J20_0482A14: しことは事實なり。而して宗祖門弟中蓮樂兩人は特
J20_0482A15: に微妙なる聲調を有し。禮讚聲明の妙手なりしを以
J20_0482A16: て。宗祖の敎化を賛翼することも少からざりしなら
J20_0482A17: んも。餘に其特技を誇りて之を濫用したることが。
J20_0482B18: 適此災厄を招く近因たりしも知るべからず。
J20_0482B19: 宗祖が。七十五歳の高齡を以て門弟の罪に連座し
J20_0482B20: て。邊鄙なる土佐に赴かるることは。日夕其敎を受け
J20_0482B21: たる門弟並に信徒の悲嘆したる所にして。九條公の
J20_0482B22: 如き。種種の方面に運動して。罪科を免れしめんこ
J20_0482B23: とに努力せられたるも其効なく。門弟等も。師をして
J20_0482B24: 暫く法話を禁止し。念佛を中止せしめて。赦免を得
J20_0482B25: んと焦慮したるも。宗祖自身は。何等悲觀する所な
J20_0482B26: く。常の如く念佛し。些も顧慮する所なく。盛に淨
J20_0482B27: 土の法門を談じ。門弟の強ひて之を止めんとするや。
J20_0482B28: 『吾たとひ死刑にをこなはるともこの事いはずばあ
J20_0482B29: るべからず』と語り敢て之を肯ぜず。又門弟の別離
J20_0482B30: を喞ち遠流を悲むや。之を慰諭して『流刑さらにう
J20_0482B31: らみとすべからず。そのゆへは齡すでに八旬にせま
J20_0482B32: りぬ。たとひ師弟おなじみやこに住すとも。娑婆の
J20_0482B33: 離別ちかきにあるべし。たとひ山海をへだつとも。
J20_0482B34: 淨土の再會なんぞうたがはん。又いとうといへども

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