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J3060 浄土宗史 本会 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J20_0476A01: れしも。皇圓の切なる諫止により暫く交衆生活を續
J20_0476A02: けられたるも。益其醜汚に堪ふること能はずして這
J20_0476A03: 回の隱遁を斷行せられしなり。
J20_0476A04: 叡空は。大原良忍上人の高弟にして。圓頓戒の嫡
J20_0476A05: 統を受け。又其融通念佛をも相承せられたるべく。
J20_0476A06: 其他眞言秘密の法にも精通して。當時叡山にては學
J20_0476A07: 德兼備の英匠として名聲甚高かりし人なり。宗祖は
J20_0476A08: 戒體の色心。念佛の觀稱等の問題に關して。彼と意
J20_0476A09: 見を異にし。屢屢激論を交へられしことあり。其他
J20_0476A10: にも學問上には意見の相違せる點少からざりしも。
J20_0476A11: 其德操に於ては深く信賴せられたり。叡空また宗祖
J20_0476A12: を益友良伴として之を好遇し。宗祖が山上に在住の
J20_0476A13: 間は。常に生活の資糧を供給して。求道に專注する
J20_0476A14: ことを得せしめたるが故に。物質精神兩面に於て宗
J20_0476A15: 祖の恩人なり。
J20_0476A16: 叡空は。宗祖が其庵に來れるを歡迎し。其道心の
J20_0476A17: 切實なるを感歎して。房號を法然。諱を源空と命名
J20_0476B18: せり。蓋源空の源の字は叡山に於ける最初の師源光
J20_0476B19: に取り。空の字は叡空自己に取れりと云ふ。爾來孜
J20_0476B20: 孜として聖敎を披閲し。時時瞑目思索し。時に叡空
J20_0476B21: と論談して。年を黑谷に過ごされしも。未だ安住の
J20_0476B22: 地を發見するに至る能はず。
J20_0476B23: 二十四歳以後。南都北京に於ける諸宗の碩學を歷
J20_0476B24: 訪して。家家の信行を敲く。即法相宗には南都興福
J20_0476B25: 寺の藏俊僧都を。三論宗には醍醐寺の寬雅權律師を。
J20_0476B26: 華嚴宗には仁和寺の慶雅法橋を訪ふ。此等の人人孰
J20_0476B27: れも自家の蘊奧を披歷して之を示せるも。宗祖の求
J20_0476B28: めらるる所と吻合するものなかりき。其他律宗の中
J20_0476B29: 河寺の實範上人に諮決せられたりと傳へらるるも實
J20_0476B30: 否定かならず。かく叡山山外の諸宗の高僧を歷訪の
J20_0476B31: 結果も餘り得る所なかりしかば。又も黑谷に歸り報
J20_0476B32: 恩藏(經藏)に入りて。金典祖賁を研覈し。自己の
J20_0476B33: 求むる所を自己に發見するの外途なきを覺悟した
J20_0476B34: り。

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