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J2940 瀧山大善寺志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J20_0152A01: まします上上人も極樂に必參りあへと仰の侍りし
J20_0152A02: に今まで往生せずして穢土のすまゐかたがた無益
J20_0152A03: なり釋尊も八十の御入滅上人も八十の御往生尊願
J20_0152A04: 又八十なり第十八は念佛往生の願なり今日又十八
J20_0152A05: 日なり如法念佛の結願に當て今日往生したらんは
J20_0152A06: 殊勝の事なるべしと申ければ斯る用意とは思ひも
J20_0152A07: よらす只あらましの詞と心得て實にめでたくこそ
J20_0152A08: 候はめと返答しけるに其夜もあけ十九日にもなり
J20_0152A09: ぬあへて苦痛なし只今臨終すべき心地もなかり
J20_0152A10: ければ子息の民部太夫守朝をよび切たる腹を引あ
J20_0152A11: けてまろきもといふ物の殘りて臨終の延ると覺る
J20_0152A12: なりよりて見よと申ける時ぞ初て人しりにける心
J20_0152A13: さきの程にまろき物のあるよしを申ければ手を入
J20_0152A14: て引切て投すててこれがある故に臨終はのぶるな
J20_0152A15: るへしとぞ申ける人人驚きあはてけれは娑婆のい
J20_0152A16: とはしく極樂の願はしき志日に隨ひていやまさり
J20_0152A17: ければ一日もとく參りたくてかくは斗らひぬるよ
J20_0152B18: しをかきくどき申ければ實に願往生の志の熾盛な
J20_0152B19: るありさま見る人みな涙を流さぬはなし七日迄延
J20_0152B20: ければうがひの水のかよふ故なるべしとてうがひ
J20_0152B21: をととめて塗香を用けるが氣力も更におとろへ
J20_0152B22: ず程なく疵も愈にける後には時時行水を用ひける
J20_0152B23: とかや正月一日に成ければ死せすしては往生すべ
J20_0152B24: き道なき故に尊願は正月一日の祝には臨終の儀式
J20_0152B25: をならして年久しくなれり日來のあらましたがえ
J20_0152B26: ずして今日往生すべき故に延引しけると悅て頻に
J20_0152B27: 念佛しけれども其日もすぎ次の日も又暮ぬ只今臨
J20_0152B28: 終すべき心地もなかりければ心なくぞ侍るよし連
J20_0152B29: 日になげき申けるが正月十三日の夜の夢に來十五
J20_0152B30: 日午刻に迎ふべきよし上人來りて告給ふと見るさ
J20_0152B31: めて是を語り歡喜の涙を流しけり件の日に成しか
J20_0152B32: ば上人より給りたる袈裟をかけ念珠を持て西に向
J20_0152B33: ひ端坐合掌して高聲に念佛數百返となへ午の正中
J20_0152B34: に念佛とともに息絶ぬ紫雲空にそびへ異香室にみ

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