浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J20_0073A01: | て念佛の弘通をさまたけ又眞言宗數多にて念佛は淺 |
J20_0073A02: | 近の法なりとあらそふ師無礙の辯才を以て是等をく |
J20_0073A03: | ちき淨土深妙の要法末代相應他宗の及はさるを示諭 |
J20_0073A04: | ありしかば遠近其名聲をつたへ説法の會座群聞あり |
J20_0073A05: | ここに生實城主原式部少輔平胤榮は千葉家の一族數 |
J20_0073A06: | 萬貫を領知し藩老の第一に居し威風を近に振へり夫 |
J20_0073A07: | 人は萬里谷武田氏の息女にして容儀無雙の美質なり |
J20_0073A08: | しかるに他美をいかれるは女性の常性なればにや嫉 |
J20_0073A09: | 慮頗る病を起して近郷の良醫も術を失ひ療祈の失墜 |
J20_0073A10: | いくはくをしらずといへとも効驗更になしここにか |
J20_0073A11: | の城主の寵妾此事をなげき愁へひそかに胤榮につぐ |
J20_0073A12: | 胤榮又是をしかりとして師の道風頻りに扇くを聞て |
J20_0073A13: | 胤榮家士を集めて評決し病室の治功を乞んとす夫人 |
J20_0073A14: | も又自苦に苦しみ頗招見の想あり是より先には眞言 |
J20_0073A15: | 日蓮の流派を信して光明眞言法華の題目をのみ唱へ |
J20_0073A16: | 祈驗する事頻なりといへども病苦いよいよつよく發 |
J20_0073A17: | 熱堪かたき故今は何れの宗にても此治病の法ありせ |
J20_0073B18: | ばと思はれしとかやむべなるかな題目秘呪をとなふ |
J20_0073B19: | る心は唯自勝強慢の心に修するのみなれば逆上發熱 |
J20_0073B20: | をととのふにいかんぞ順快すべきここに家士の評決 |
J20_0073B21: | も唯家の爲病療の外なければ左に定りし上師を請待 |
J20_0073B22: | あり師又侯家の勝益は一家にても民間數千に倍し念 |
J20_0073B23: | 佛の興隆ここにありと密に三寶に念願し永祿二年 |
J20_0073B24: | 三月城中に入て念佛の法要をとき懺悔ををしへ念佛 |
J20_0073B25: | を勸諭あり夫人一見し師の凡ならさるに歸せられ胤 |
J20_0073B26: | 榮又宗風を仰ぎて逢見の遲き事をうらむに至れりこ |
J20_0073B27: | こに於て橫須賀の地藏堂をしつらひて師の休息の閑 |
J20_0073B28: | 處とし程なく寺院開基の沙汰初れりその中間朝晩入 |
J20_0073B29: | 城し佛門の靈益をさとされしかは崇信日日に渥く起 |
J20_0073B30: | 行頗る倍し病患頓に愈ゆ故に夫人胤榮に乞て速に開 |
J20_0073B31: | 寺の談に及ひ同年秋工棟の初あらむと地を選はるる |
J20_0073B32: | の時夫人云城外乾隅の園林はこれ妾が紛粧の采地な |
J20_0073B33: | り伽園此地に造るべしと翌永祿三年落慶あり此時鎭 |
J20_0073B34: | 守として東の山林に愛宕西の藪に鷲明神北の方に富 |