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J2850 小石川伝通院志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0687A01: の子細なしとてとりあえす故に強て問事を得すして
J19_0687A02: 歸りけるここにあることふたとせ餘りにして一度故
J19_0687A03: 郷に歸り親類をはじめ村中家家に入て念頃に念佛し
J19_0687A04: ぬ是いとまこひの心なるべし上人首おもなかにして
J19_0687A05: 色白く髮長くたれて髭も延て終に剃刀をあつる事な
J19_0687A06: し鹽味噌麥米を喰せす粟黍稗蕎麥の類を喰し至て馳
J19_0687A07: 走には笋松茸の類を水熟にしてすすむるのみなり人
J19_0687A08: に向ひ言語をかはしあひしらふ事なし至て念頃なる
J19_0687A09: 人は其人の名を呼ふはかりなり毎日念佛の外彌陀を
J19_0687A10: 拜する事二三百禮なり毎月十五日にも里に出て人に
J19_0687A11: 念佛を授るすべて人に面を合する事なし隨身の外は
J19_0687A12: 近よる事を得す其のち鹽津村の寺に移り念佛修行せ
J19_0687A13: らるるにいよいよ歸依するものおひたたし終には前
J19_0687A14: 國主の御聞に達し御菩提所へ佛參の御歸りに少し廻
J19_0687A15: りなれとも御輿をよせられて上人の容體を上覽有り
J19_0687A16: しとかや爰に住せらるる事數年にして遠國よりも參
J19_0687A17: 詣おひたたし依てさん錢もなげる事無用にすれとも
J19_0687B18: つもりて銀子程にもなりぬされども上人には望なけ
J19_0687B19: れば仕方もなく里人預り置しとなり國主の御母君淸
J19_0687B20: 眼院樣も御參詣あり亦上人を招き給ひけり上人上京
J19_0687B21: 致されける時に淸眼院樣より御はなむけ被成度まま
J19_0687B22: 何にても望み申されよと役人衆より御沙汰あり然れ
J19_0687B23: とも望みの品なしと答へられけり亦強て御意ありけ
J19_0687B24: れは然は道の程つく杖を寄附あるへしと申されけれ
J19_0687B25: は今持るる鐵の錫杖を賜りける京都にては華頂山へ
J19_0687B26: 參詣歸りてみこといふ所にあること一年餘なり夫よ
J19_0687B27: り有田郡菅井村の山は畠山の城跡にて多く洞穴の有
J19_0687B28: る處に籠りて念佛申されける毎月十五日には山を下
J19_0687B29: り村村の人に十念を授けらる其餘は洞穴に住みて人
J19_0687B30: を見さりける菅井村に淸介とて貧しき筋目ある百姓
J19_0687B31: あり信心厚き人にて其村より上人の洞穴まては凡廿
J19_0687B32: 餘町も有り毎日上人の喰物を調へ持運ひて供養し風
J19_0687B33: 雨寒暑をいとふ事なし上人何方へ行るるとも付隨ひ
J19_0687B34: て苦難をかへり見す其あたり一二里つつ隔て上人の

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