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J2850 小石川伝通院志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0662A01: りとて入寺を許し玉ふかの多久藏主の智德他にす
J19_0662A02: くれ庶人みな尊敬す其のち二三ケ年の學席を經て
J19_0662A03: ある夜の夢に我は誠は稻荷大明神なり登山せし事
J19_0662A04: 我大願あり國家安全にして僧俗の願望を成就せん
J19_0662A05: 事を願ふに依て小社を作りあたへ給ふべし永代當
J19_0662A06: 山守護神となるへしと示現し白狐の形を顯し給ふ
J19_0662A07: 則ち澤藏司所化の時持玉ふ守本尊の十一面觀世音
J19_0662A08: の尊像を春日の作なり 本地として境内に鎭坐あらせ給ふ
J19_0662A09: 委縁記にあり
J19_0662A10: 文化十二年小石川戸崎町石屋長左衞門弟子丑之助
J19_0662A11: 重瘡を煩ひ醫も斷りけり丑之助元より大酒にて有
J19_0662A12: しか讃州金毘羅神に願立し禁酒するに病漸愈然れ
J19_0662A13: とも酒は生得好なれは折折は酒鹽と名つけ菜物に
J19_0662A14: ひたし飮む事あり九月十日は如例鎭守氷川明神の
J19_0662A15: 祭日なりしか其前日に所の若者とも彼丑之助にい
J19_0662A16: ふは和主は狂踊の上手なれは如例明日は彼踊をせ
J19_0662A17: よと丑之助云我瘡毒愈難かりしを金毘羅神に立願
J19_0662B18: し酒を禁し愈たる事は皆皆知る事なり醉のしれ心
J19_0662B19: なくて彼踊せらるへき歟と云に皆皆云明日は鎭守
J19_0662B20: の祭なれは常とは異なり酒ものみ踊もせよと強に
J19_0662B21: いへは丑之助もけにもと思ひ當日朝より友たちと
J19_0662B22: 酒飮遊醉狂れ在けるか巳時はかりより忽大熱さし
J19_0662B23: あらあつや堪かたや金毘羅樣免し給へと云皆皆驚
J19_0662B24: て如何と問へは庭の空を指さして人人には見えさ
J19_0662B25: るか金毘羅樣あれにおはしますといへと皆皆には
J19_0662B26: 見えすいかなる御形勢そと云丑之助火のことき息
J19_0662B27: をつき御神は御黑髮長く垂て冠裝束を召れ雲の上
J19_0662B28: に立給ひ數多の御供附したかひ爪折の緋かさを差
J19_0662B29: かけ奉り御前に鬼神のことき力士ありて其仰を承
J19_0662B30: り汝か病極て愈ましきを強に祈申すか故にいやし
J19_0662B31: 給ふ所なり然るに折折ひそかに少つつ酒を飮たる
J19_0662B32: たにあるをけふはけさより思ふままに酒飮て醉狂
J19_0662B33: るる事憎く思食に依り手足の指を皆折しめ給ふよ
J19_0662B34: し也といひもはてぬに早うつ伏にふして免したま

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