ウィンドウを閉じる

J2820 三縁山志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0558A01: げ寂寥たる石苔眼に死滅の色をしめす立ならべる石
J19_0558A02: 塔は東西の國より掛錫の大衆なり故園の月を遠くへ
J19_0558A03: たちて命おはれば恨を剃度の寺におくれり見渡せる
J19_0558A04: 五輪は南北の男女なり生前の花を跡に殘して身まか
J19_0558A05: れば悲を親族の袖につつめりかれをとへは年若の女
J19_0558A06: 是をきけは壯勇の士なりみな緇素のわかちありとい
J19_0558A07: へども心を靑天にかけずといふ事なし然るに一息か
J19_0558A08: へらざるに及びては千秋の齡も水上の泡にひとしく
J19_0558A09: 曉雲晩月われらが發心をすすむるにあり然らは此墳
J19_0558A10: 墓に至ん輩はいよいよ生死無常の姿に驚きますます
J19_0558A11: 無上菩提の資糧を植べし前中納言持豐卿やつがれに
J19_0558A12: 給へりし釋敎十首の中に
J19_0558A13: たのめただ死するばかりは僞りの
J19_0558A14: なき世なりけり南無阿彌陀佛
J19_0558A15: 『或書』云ここに予法祖の塔をぬかづき誦經し將
J19_0558A16: に歸らんとする時一僧後にたたすみ予を顧て云凡
J19_0558A17: 人世五十年一期の所業は燈前の笑談たり有爲變し
J19_0558B18: 易く無常賴かたし抑西隅東邊より當山に掛錫する
J19_0558B19: ものみな同しく圓頂の身といへども其所願は悉く
J19_0558B20: 大刹に住し紫金の衣裝をかさね僧綱の極位をまち
J19_0558B21: て寺院の政制を執柄せんと思ふにあり然るに身金
J19_0558B22: 剛にあらす報生前に定りありてかくのことく前亡
J19_0558B23: 後滅し體を地に埋み名を石にゑりての後は自剃の
J19_0558B24: 師匠敎書の法縁のみならず花に馴月に契し芳友た
J19_0558B25: りとも音信既に絶し追慕涙にあり况や千山萬水を
J19_0558B26: 凌て掛錫し二脉相承に至らす故園に歸省なくして
J19_0558B27: 命終れるをや漫漫たる海路嶠嶠たる山嶺を隔し親
J19_0558B28: 疎の家族ははるかに此地を思ひ空しく此境を恨ん
J19_0558B29: かたたし自身は本より般若の智水をくみて弘誓の
J19_0558B30: 願船にのりえてん上は西土の敎主もいかてか見す
J19_0558B31: て給はん引接たのみあり得生うたがひなからん歟
J19_0558B32: しかりといへども生縁のなげき修行の未熟他力に
J19_0558B33: ほこりて本願にもるる時はすすみて自身に益なく
J19_0558B34: しりぞきて不孝の罪多しますます輪廻のもとひを

ウィンドウを閉じる