ウィンドウを閉じる

J2820 三縁山志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0467A01: を淸め淨服を着て彼所に至り草村に坐して恭敬禮
J19_0467A02: 拜して一心に寶號をとなへつつ卯の刻より巳の刻
J19_0467A03: に及ひしか撿校しきりに睡眠を催しさなから眠
J19_0467A04: りける夢に靈香芬馥としてあたりに薰し巖の上に
J19_0467A05: 辨才天あらはれたまひ端嚴無比の御姿にて琵琶を
J19_0467A06: 彈して坐し給へり其曲微妙にして曾て人間に聞所
J19_0467A07: にあらす扨撿校に告てのたまはく汝年來國師に祈
J19_0467A08: りて我か形を見ん事を願へり其志を憐みてここに
J19_0467A09: 來りてまみえしむとて朝四時より夕七時に至るま
J19_0467A10: て委しく琵琶の秘曲を傳へ畢りていつちともな
J19_0467A11: く去り給へりと思へは夢覺たり撿校はとうとさも
J19_0467A12: なこりおしさも限りなく落涙し頂禮せしか從者の
J19_0467A13: 男いふやうここなる老木の櫻の枝に辨才の御影か
J19_0467A14: かりいませりとてうやうやしく卷おさめて授れは
J19_0467A15: 撿校ひとしほ感喜にたへす是そ辨天の賜る所なら
J19_0467A16: んと頂戴して家に歸りけるに遠近の人聞傳へて拜
J19_0467A17: み來る人市の如し其後は此御影をもて妙音譜の本
J19_0467B18: 尊とし尊重供養怠りなかりしか諸人の利益多か
J19_0467B19: りしとなんかかる靈像を我家に安置せんは恐あり
J19_0467B20: とて撿校命終ののち當寺に納めて什寶とせり市塲
J19_0467B21: 坂の下を妙音澤と名つけしは此時よりの事也とそ
J19_0467B22: 『又』云當寺六世の住持眞譽助給は厭欣の志深く
J19_0467B23: 堅固の念佛者なりしか何とそ兼て死期を知り心靜
J19_0467B24: に來迎を待奉らはやと思ひけれは常に此事を國師
J19_0467B25: に祈念せしに或時分明の告を蒙り元文三午年五月
J19_0467B26: 廿二日巳の刻臨修正念にして念佛の聲と共に命終
J19_0467B27: せり其年當寺前庭の池に一莖二花の蓮を生せしに
J19_0467B28: 此蓮初月忌に當りて滿開せしかは往生の奇瑞なら
J19_0467B29: んと人皆感歎しける『武藏國與野長傳寺記』云國師以前
J19_0467B30: よりありし古き寺にて御朱印もありしかと故あり
J19_0467B31: て召上られ此頃まては微微たりしを國師堂宇の構
J19_0467B32: そなはり大寺となりしにより開山とす堂のわきに
J19_0467B33: 南天燭の大木あり長一丈八尺はかり本尊は彌陀の
J19_0467B34: 立像長三尺定朝作と云或は運慶作とも云國師自作

ウィンドウを閉じる