浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J19_0289A01: | はす却て敵の猛勢に蹴立られ味方引取らんとす城 |
J19_0289A02: | 兵勝に乘て喰留んと鐵砲を放ち矢を射る事雨のご |
J19_0289A03: | とし日も既に西に入て物のあいろも見へわかす味 |
J19_0289A04: | 方の軍勢いかかせんと色めきたるを城兵頻に味方 |
J19_0289A05: | を襲ふ事急なり御旗本も危く如何と見へし所へ全 |
J19_0289A06: | 體眞黑に鎧ふたる武者一騎馳來り勇猛を震ひ敵の |
J19_0289A07: | 軍兵悉く城中へ追入けれは味方安やすと人數を引 |
J19_0289A08: | 取けり其後ほど過て家康公陣屋にて例のことく御看 |
J19_0289A09: | 經を被遊んとて本尊の扉を御開有けるに黑佛御身 |
J19_0289A10: | に汗出足には土付て見へけりこは不審しと御近習 |
J19_0289A11: | の士に御尋ありけるに今日の軍に何そ怪敷事はな |
J19_0289A12: | かりしやと仰にされは何國とも知らぬ黑裝束の法 |
J19_0289A13: | 師と見へし武者陣頭に進み敵兵を城中へ追入申候 |
J19_0289A14: | 是に依て味方安やすと引取申候と言上す家康公扨 |
J19_0289A15: | こそ法師武者と見へしこそ正しく此本尊の御加勢 |
J19_0289A16: | なりと厚く禮拜なされしとそ其外度度の奇瑞あり |
J19_0289A17: | しとなん依之家康公御一生御隨身有て軍中迄はな |
J19_0289B18: | し給はす日夜朝暮御信心懈る事なし今に武江三縁 |
J19_0289B19: | 山增上寺に入佛したまふ黑佛と申奉るは此本尊の |
J19_0289B20: | 御事なり靈驗のあらたなる事筆には及ひかたしと |
J19_0289B21: | 『伸書三十七左』云一向一揆時永祿七年正月十一日 |
J19_0289B22: | 針崎衆上和田を攻る大久保父子防戰せしに五郞右 |
J19_0289B23: | 衞門は討れ七郞右衞門は創を蒙り上和田殆と危し |
J19_0289B24: | 中略神祖の御馬印白五幅の四方に厭離穢土欣求淨土 |
J19_0289B25: | と墨にて書たる也これは一とせ御戰利なかりし時 |
J19_0289B26: | 三州の大樹寺へ入せられ登譽上人に對面有て沒後 |
J19_0289B27: | の事なと賴給ひて御自害有へかりけるに上人とど |
J19_0289B28: | め參らせ今一度御戰有てこそ兎も角もならせ給ふ |
J19_0289B29: | べきよしすすめ參らせて白布に此字を書て御馬の |
J19_0289B30: | 先に押立當寺の靈佛九郞本尊を上人はいだき奉り |
J19_0289B31: | 僧徒以下をかり催して出て戰ふ程に御戰忽ち利あ |
J19_0289B32: | りけれは永く當寺の檀那たるへきよしを書て上人 |
J19_0289B33: | に給ふ上人其筆の跡を九郞本尊の像中に納められ |
J19_0289B34: | て今にありといふこれより此御馬印を御吉例の由 |