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J2820 三縁山志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0289A01: はす却て敵の猛勢に蹴立られ味方引取らんとす城
J19_0289A02: 兵勝に乘て喰留んと鐵砲を放ち矢を射る事雨のご
J19_0289A03: とし日も既に西に入て物のあいろも見へわかす味
J19_0289A04: 方の軍勢いかかせんと色めきたるを城兵頻に味方
J19_0289A05: を襲ふ事急なり御旗本も危く如何と見へし所へ全
J19_0289A06: 體眞黑に鎧ふたる武者一騎馳來り勇猛を震ひ敵の
J19_0289A07: 軍兵悉く城中へ追入けれは味方安やすと人數を引
J19_0289A08: 取けり其後ほど過て家康公陣屋にて例のことく御看
J19_0289A09: 經を被遊んとて本尊の扉を御開有けるに黑佛御身
J19_0289A10: に汗出足には土付て見へけりこは不審しと御近習
J19_0289A11: の士に御尋ありけるに今日の軍に何そ怪敷事はな
J19_0289A12: かりしやと仰にされは何國とも知らぬ黑裝束の法
J19_0289A13: 師と見へし武者陣頭に進み敵兵を城中へ追入申候
J19_0289A14: 是に依て味方安やすと引取申候と言上す家康公扨
J19_0289A15: こそ法師武者と見へしこそ正しく此本尊の御加勢
J19_0289A16: なりと厚く禮拜なされしとそ其外度度の奇瑞あり
J19_0289A17: しとなん依之家康公御一生御隨身有て軍中迄はな
J19_0289B18: し給はす日夜朝暮御信心懈る事なし今に武江三縁
J19_0289B19: 山增上寺に入佛したまふ黑佛と申奉るは此本尊の
J19_0289B20: 御事なり靈驗のあらたなる事筆には及ひかたしと
J19_0289B21: 『伸書三十七左』云一向一揆時永祿七年正月十一日
J19_0289B22: 針崎衆上和田を攻る大久保父子防戰せしに五郞右
J19_0289B23: 衞門は討れ七郞右衞門は創を蒙り上和田殆と危し
J19_0289B24: 中略神祖の御馬印白五幅の四方に厭離穢土欣求淨土
J19_0289B25: と墨にて書たる也これは一とせ御戰利なかりし時
J19_0289B26: 三州の大樹寺へ入せられ登譽上人に對面有て沒後
J19_0289B27: の事なと賴給ひて御自害有へかりけるに上人とど
J19_0289B28: め參らせ今一度御戰有てこそ兎も角もならせ給ふ
J19_0289B29: べきよしすすめ參らせて白布に此字を書て御馬の
J19_0289B30: 先に押立當寺の靈佛九郞本尊を上人はいだき奉り
J19_0289B31: 僧徒以下をかり催して出て戰ふ程に御戰忽ち利あ
J19_0289B32: りけれは永く當寺の檀那たるへきよしを書て上人
J19_0289B33: に給ふ上人其筆の跡を九郞本尊の像中に納められ
J19_0289B34: て今にありといふこれより此御馬印を御吉例の由

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