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J2820 三縁山志 摂門 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J19_0270A01: かにも存奉らすと申上らる君又宣ふは成程明朝來
J19_0270A02: て御齋召んと堅き御意にて御立あり和尚思ひける
J19_0270A03: は太守明朝の御出實しからずといへともかたかた
J19_0270A04: の仰なれは萬一若御入あるへきにもやあらんと其
J19_0270A05: 用意なとありしに御約束にたがひ給はず翌朝御入
J19_0270A06: あり和尚悅喜斜ならす即ち麁菜の御齋を奉らる偖
J19_0270A07: 公仰られけるは今朝齋を所望申す事別儀にあらす
J19_0270A08: 大將たらんもの菩提所なきは死を忘るに似たり勿
J19_0270A09: 論先祖代代の菩提所は三州大樹寺なり當所にて菩
J19_0270A10: 提所は貴寺を賴み入師檀の契約仕らん爲なりとあ
J19_0270A11: れば和尚兎角の返答なく只涙を流さる公御覽じ涙
J19_0270A12: を流し給ふ故を御尋あれば和尚云くされは昨日の
J19_0270A13: 御入府にて間もなく加樣の御沙汰あるへきとも存
J19_0270A14: 奉らす其上愚僧體の者御菩提所の住持となり申さ
J19_0270A15: ん事思ひもよらす候なり偖偖有難き御事とて落涙
J19_0270A16: しばしばやまざりき公御感悅淺からずさらば師檀
J19_0270A17: の契約に十念を御授候へとて即ち御拜授ありて御
J19_0270B18: 歸城なり其御跡より和尚は無僕の體にて登城有け
J19_0270B19: れば即ち和尚を御前へ召し大樹寺よりの次第を逐
J19_0270B20: 一に御物語ぞ遊ばしける其後增上寺を平川口へ移
J19_0270B21: し給ひしか御城の要地逼れりとて後程なく慶長三戌年
J19_0270B22: 今の芝濱の面に御引移ありと云云
J19_0270B23: 『落穗集第二』云問云江戸表に於て三縁山增上寺を
J19_0270B24: 御菩提所金龍山淺草寺を御祈願所と被仰出とあ
J19_0270B25: るは御入國以後の儀に有之候と申は其通りの事に
J19_0270B26: 候哉答云此儀に付ては色色の説を申觸候へ共我等
J19_0270B27: 承及候趣は權現樣御入國遊されしは天正十八年八
J19_0270B28: 月上旬と申に相違無御座候然とも北條家を御たや
J19_0270B29: し其跡を御拜領と有之前方より相定りたる儀にて
J19_0270B30: も有之候哉權現樣小田原表御著陣被遊候以後江戸
J19_0270B31: 表に於て御祈願所に可被遊天台宗一ケ寺と御菩提
J19_0270B32: 所に可罷成樣なる淨土宗一ケ寺見立候樣にとの御
J19_0270B33: 吟味被仰出候節淨土宗に可然寺とては傳通院增上
J19_0270B34: 寺と申して二ケ寺有之其内傳通院は古跡には有之

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