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J2760 略伝集 本会 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0519A01: まの煙絶る日も無し』と謳ふて其志を明すか如き以
J18_0519A02: て其實事たるを憑徴すへし。嗚呼出世といひ出世と
J18_0519A03: いふ出離生死にあらすして知增兩山猊座の謂のみ。
J18_0519A04: 有德といひ有德といふ道心德行にあらすして積財の
J18_0519A05: 謂のみ。敎海の風潮元祿已降武門淫靡の波流に混化
J18_0519A06: し。滔滔乎として利名の岸頭に趨向す。而も能く毅
J18_0519A07: 然之か中流の砥柱となり。富貴を視る浮泡の如く勢
J18_0519A08: 榮を望む蜃樓の如く。師長に華頂大僧正あり法兄に
J18_0519A09: 百山貫主觀了上人あり自己亦た畿甸の名山に踞し英
J18_0519A10: 名夙に天下に播す而も曾て與からさるかことし。風
J18_0519A11: 雲脚下に臨む而も跡を烟霞に晦まし。龍門指顧に在
J18_0519A12: り而も光を丘壑に葆み。凞凞乎として世表に遨嘯し
J18_0519A13: 麻衣一鉢分衞以て其眞を養ふ。誠に是れ雅量一世を
J18_0519A14: 曠ふし德操百代に冠たるにあらすんは安んそ克く之
J18_0519A15: に到らん。其の苟も人を容れす又た人に容られんこ
J18_0519A16: とを求めす。道儀を當時に師表し風敎を後代に貽謀
J18_0519A17: するに至ては師の風を聞て感奮する者今古何そ限ら
J18_0519B18: ん。然則ち師か宗家に寄遺せる冥益實に大なるもの
J18_0519B19: ありと謂ふも誰か敢て然らすと云はんや。顏淵言孔
J18_0519B20: 子。不容何病。然後見君子。老子曰。夫惟大。故
J18_0519B21: 似不肖。若肖。久矣其細。と豈夫れ爾らすや。少
J18_0519B22: 時の誓願此に於てか滿ち絶外孤立の能事此に於てか
J18_0519B23: 永く沒せす。師の如きは眞に善く逆境に處するもの
J18_0519B24: と謂ふへき哉。寒山深稱我心 純白石無黄金
J18_0519B25: 泉聲暗撫伯琴 有子期辨此音。是れ寒山子が
J18_0519B26: 䏶を叩ひて歌ひし所にあらすや。而して夢菴は實に
J18_0519B27: 是れ師か寒山なり。花に起き月に臥し風に嘯き馬に
J18_0519B28: 和し。泛泛乎として人間世を玩ひ惁惁然として紫雲
J18_0519B29: 臺を徯つ。意會すれは筆を搦つて彩雲を飛し。請あ
J18_0519B30: れは座に升つて天華を雨す。金鍮論は寶曆十一年を
J18_0519B31: 以て成る抑揚擒縱古賢把て掌上に掀翻し。戯歌集は
J18_0519B32: 明和四年を以て輯む吐鳳雕龍眞に宇宙の奇觀を究
J18_0519B33: む。所謂麤言輭語皆歸佛乘もの。其他眞察僧正傳
J18_0519B34: を編し伏虎錄を校する等多くは此間に在り。今一一

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